はて?放課後児童クラブは、何のために存在している?それぞれの立場の思惑が結局、優先されてませんか?

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)は、保護者の就労などを保障するために子どもに遊びと生活の場を用意して、そこで子どもが育っていくとなっていますが、「なにを」重視しているのか、考えがいまだにバラバラのようですね。
 ※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。

<預かってくれればいい>
 世間一般の、放課後児童クラブに対する「期待」は、この「子どもを預かってくれればいい」なのだと私は感じてきました。子どもを預かってくれる間、保護者は働けたり学校に通えたり、介護や看護ができたりするわけですから。子どもが、預けられている間、どうやって、どのように過ごしているかについては、「クラブの子たちと遊んだり宿題したりして過ごしているんでしょう。危ないことがないように学童の先生が見てくれているでしょうし」という考え方の保護者が圧倒的に多いでしょう。
 これからの時期、メディアで言及されることが増えるであろう「夏休みの壁」は、まさにこの児童クラブに世間が期待している預かり機能に関する論点です。長期休業時、子どもを家で過ごさせることによる不安(防犯面、生活規律面)を児童クラブに「預ける」ことで解消したいが、夏休みに児童クラブに入所できないという状態がこの「夏休みの壁」です。今年度、国が調査研修をするという、いわゆる「サマー学童」(夏休み期間中等の短期間開設児童クラブ)も、この預かり機能へのニーズに対応する施策といえるでしょう。

 世間一般の多くの保護者と、政府・行政は、この「子どもの預かり場が確保できれば良い」という思考の範囲内にあるのだと私は感じます。児童クラブの場を整備、増加すること=子どもの居場所(受け入れ場所、預かり場所)を確保すること、です。(その居場所の数の整備すらなかなか進まないのは、子どもの居場所なんか予算をかけてまで作ることは不要なんだよと思っている行政関係者が多いということでしょう)

<子どもへの支援、援助を通じて子どもの健全な成長を願う>
 これは、児童クラブに直接関わっている、真面目に子どもへの育成支援に取り組んでいる職員や、ごく一部の保護者に強く浸透している考え方です。
 放課後児童クラブにおける事業の目的について「放課後児童クラブ運営指針解説書」には、こう記されています。
「放課後児童クラブでは、「遊び等の活動拠点」としての機能と「生活の場」としての機能を適切に備え、子どもが安全に安心して過ごすことができ、子ども一人ひとりの状況や発達段階を踏まえた育成支援を展開することが求められます。」(https://www.mhlw.go.jp/content/000765364.pdf) 10ページ

 ここでは保護者の就労を支えるという内容は含まれていませんが、この文章は、児童クラブという「場」で行われる「事業の目的」について限定して説明しているのであって、保護者の就労等について考慮しないというのではなく、それは事業を行う上での前提条件に係るものである、という理解なのでしょう。子どもを受け入れる「場」があることで保護者の就労等の保障が実現できることは言うまでもありません。その「場」についての役割について解説しているものであって、その内容が、すなわち子どもへの育成支援を通じて子どもが健全に育っていくこと、ということです。

 児童クラブの事業運営者(注:利益を得ることを主目的に放課後児童健全育成事業を実施、展開する事業者は含まれません)や、クラブ現場で働く職員(注:職務に忠実な職員に限る)は、この、子どもへの支援を行うことを、指針解説書そのままに「何より大事なのは、いや唯一大事なのは、子どもへの育成支援。子どもへの育成支援を妨げるものは、あってはならない」と、素朴に、単純に受け止めることになります。

 この考え方は、ややもすると、「子どもの育ちに妨げになることは、あってはならない、極力、排除したい」という「子ども絶対優先原理主義」になります。本来は、児童クラブにおいてどのような支援を行えば子どもの健全な発達、育ちに資することができるかを考えて実践するのが児童クラブの役割ですが、この「子ども絶対優先原理主義」は、「子どもの育ちに絶対的に欠かせないのは親子関係。親子関係を大事にしてください。宿題を親が見るのは当然です。子どもの弁当を親が時間をさいて作るのは当然です。親が仕事の休みの日は子どもと一緒に過ごすのが当然です。すべては子どもの健全な育ちに必要です」という思考に陥るものです。

<楽して働きたい、楽して生きていたい>
 労働者も経営者も、必要以上に無理をして働くことは通常、望みやしません。当たり前です。よって、そのこと自体は否定しません。しかし、この考えは、児童クラブにおける社会的な使命や事業目的によって、必ずしも絶対的に優先されることはありませんし、私自身としては優先されるべき考えではない、とも考えています(労働法規を遵守することは当然必要)。具体的には、職員の健康で文化的な生活を保障するために勤務時間は午後6時までとする。それ以上の勤務はしない。よってクラブは午後6時で閉所する、というような考え方です。
 本音では、低賃金という実態が強く働いて「学童が開いている時間が長すぎる」と思っている職員は多いのです。学童が長く開いているから、保護者はそれだけ働くことになる。それだけ、親子と一緒に過ごせる時間が短くなる。健全な子育て環境ではない!と批判する児童クラブ関係者は多いですが、その批判の中に「その分、自分たちが長く働くことになるから嫌なんだよ。残業代も出ないのに」という本音が隠されています。
 先日、旧ツイッター(X)で、「午後6時半閉所の時は、職員は誰も辞めなかったのに」という趣旨の投稿を見ました。営利企業運営になって午後7時半になって子どもを迎えに来る世帯があったことを責めている内容でもありました。児童クラブで勤務していたであろう方の投稿と拝察しましたが、つくづく、残念になりました。午後6時半で閉所して楽をしていたのは職員です。午後6時半閉所のために仕事と子育て生活の両立が困難になっていた子育て世帯の悩みに寄り添おうという感覚がまったく感じられないからです。午後7時半に迎えに来た親を責めてどうするのですか?親が午後7時半にならないと迎えに来られない企業の働かせ方や社会の風潮への批判は社会全体に向けられるべきで、午後7時半にならないと迎えに来られなかった親に代わって子どもへの支援を注ぐ、そして親をねぎらうのが児童クラブの職員の務めです。それが分からない人は児童クラブで働くだけの知性を持っていないということです。

 個人の労働環境と、児童クラブの事業の目的や事業の展開内容を同一の次元で考えることは無意味です。午後6時で帰りたいなら、事業者がそのような勤務時間を設定するように経営者に働きかけて実現させればいいことであり、経営者も午後7時まで働ける職員を採用すればいいのです。そして経営者は、「どちらが事業の発展に資するか」を客観的に判断して、午後6時で帰りたい職員の基本給と、午後7時まで働ける職員の基本給に差を付ければいいだけの話です。当然、午後7時まで、閉所時間まで働く職員の方が職務の内容が増え、かつ施設点検や管理上の責任も重いですから賃金に差をつけることは合理的な対応です。なお残業代などを支払おうとしない経営者は論外です。逮捕されてほしい。

 児童クラブを運営するにあたっては、あくまでも、事業を十分に実施することができるか否かを、事業の執行の上で必要な業務として設定するべきです。その地域の児童クラブを利用する保護者の多くが午後7時前後に地域に戻ってくるのであれば、午後6時(30分)閉所を基本として午後7時までは別料金延長とするのではなく、本来は午後7時30分閉所とする、もしくは最低限、午後7時閉所を基本として午後7時30分まで別料金延長とするようにしなければなりません。しかし実際は、自分たちの「事業のやりやすさ」を優先して、児童クラブを必要とする保護者の意向とずれた事業運営が続けられているのです。思惑は「自分たちのやりやすさ」に向いています。現場職員だけではありません。特に保護者運営や、保護者運営の延長線上にある非営利法人の役員たちも、「自分たちはボランティア(もしくは低賃金)だから、そこまですることはないよ、そこまで責任は負えないよ」という意識を抱きがちです。これも楽したい主義ですね。
 引き受けた以上、無償だろうか有償だろうが関係ありません。責任を全うしなければなりません。無償で引き受けたから、やれることに限度があるのではありません。報酬0円だろうが100万円だろうが、引き受けた以上、背負うべき責任は同じです。そこが理解されないかぎり、保護者運営や地域運営委員会システムには現実上の限界があります。

<児童クラブを運営して、がっちり!>
 児童クラブの運営は、儲かります。アウトソーシング事業ですが、児童クラブ運営で利益を上げる「補助金ビジネス」には、得難い利点があります。
 児童クラブビジネスは、例えばグッズを作って売る事業と違い、得られる利益は、上限があります。グッズは売れさえすれば利益は青天井ですが、児童クラブビジネスは、(補助金+利用料)ー経費(人件費や光熱水費、法人税等)=利益ですから上限があります。一方で、グッズは売れなければ利益はゼロですが、児童クラブビジネスは、売れない=閉所、ということはまずありません。人口がどんどん減っている地域であっても、小学校の統合で市町村内1つや2つの学校にしているために児童数が集約されているので児童クラブは200人ほどの在籍児童数であることが珍しくありませんし、どんどん児童数が減っても児童クラブそのものが無くなる事態は50年先はいざ知らず、あと5~10年は心配無用でしょう。つまり、「大儲けはできないけれど、計算された利益が確保できるビジネス」です。これがどれほど有難いかは、経営者になった人であれば実感できます。今期も来期も必ず収入がある、ということのありがたみです。

 利益に上限がある以上、限りのある中で最大限の利益を確保しようとするのは企業経営上、当然です。人件費を減らせば、経費を減らせば、それだけ得られる利益は増えます。よって、職員への雇用待遇はなかなか向上しません。児童クラブに対する補助金は、少しずつですが改善されているのに、その実感が職員に届きません。そして事業者は運営できるクラブ数を増やすことに注力します。日本全国で、広域展開事業者による運営クラブが急激に増えています。なお、非営利法人であっても基本的に同じです。得られた利益を主に役員に還元していることに変わりはありません。非営利法人でも「職務、任務を果たす対償として必要なだけの報酬」と主張すればいいだけですから。

<それぞれの思惑が、好き勝手に突き進んでいる>
・預かってくれればいい。子どもの居場所であればいい。
・子どもが健全に育つ場こそ児童クラブ。子どもの育ちを邪魔することは許さない。
・あれもこれもやりたくない。楽して(給料分)、子どもの相手ができればいい。夜遅くまで働きたくない
・児童クラブ運営でウハウハ。今日もがっちり!

 児童クラブに関わる人立場や思いはそれぞれに異なります。それはどのジャンルの仕事でも同じようなものでしょうが、私は児童クラブや保育所などの対人支援の職種においてはそれは顕著であると感じます。まして、制度上において緩やかにある児童クラブでは、それぞれの思惑が容易に浸透しやすい状況にあります。それぞれの思惑を持った人が自分たちに都合の良いように児童クラブを解釈しているということです。預かり場を優先する児童クラブはそのように運営できます。学力向上を掲げる児童クラブも、そのように運営できます。職員が楽して働ける勤務体制を重視する児童クラブは、朝8時半開所で夜6時閉所という運営体制だって実現できます。思惑がそれぞれ突き進んでいるのです。はて?児童クラブってそれでいいのですか?

 私が進めている、全市区町村のHPから児童クラブの状況を拾い上げる試みでは、思惑がバラバラに進んでいる様子が見て取れます。それは、市区町村が児童クラブに関して記している説明の文章に現れています。多数派は、児童福祉法の条文を読みやすいように語句を追加しつつ、条文の内容をそのまま紹介するものですが、そうであっても、「子どもを預かる」だったり「子どもへの生活指導」だったりという文言が非常に多くの自治体のHPに付け加えられています。結局、児童クラブの設置目的、事業目的そのものの理解が、解釈に幅がありすぎるのです。それは、法令による制度の定義、また制度の実施目的、そして実施にあたっての「強制力」が、あまりにも貧弱だからだと、私は考えます。

<おわりに:根本から変えなければならない>
 もう、「地域の実情に合わせて」児童クラブを運営するという法の定めを変えなければなりません。多くの小学生が利用することになった社会インフラであり、多額の税金が投入されている事業です。いや、事業という位置付けを変更することこそ必要です。ニーズがある限り市区町村は児童クラブを設置しなければならない。運営内容は地域に関わらず、定められた内容を実施する。児童福祉法等、関連法令を改正し、国が、児童クラブの位置付けを明確にしなければならない時期に到達したのです。しかし残念ながら、法令を変えるに重要な議員たちの児童クラブへの理解が決定的に足りていません。もっと広報、周知が必要です。児童クラブの現状、課題をしっかり社会に伝え、メディアが報じること。それを手始めに、児童クラブの制度上における改善こそ、至急、推し進めねばならないのです。補助金ビジネスへのある程度の監視も、その過程の中で成し遂げられれば良いでしょう。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば、当ブログの引用はご自由になさってください)