いよいよ年度末。放課後児童クラブ(学童保育所)でこれから働く人、退職する人へ、「給料」のお話。

 放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の運営者と働く職員をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表で「あい和社会保険労務士事務所」の萩原和也です。放課後児童クラブの労務管理や事業運営をサポートする社会保険労務士です。放課後児童クラブを舞台にした(とても長い)人間ドラマ小説「がくどう、 序」が、アマゾン(https://amzn.asia/d/3r2KIzc)で発売中です。「ただ、こどもが好き」だからと児童クラブに就職した新人職員の苦闘と成長、保護者の子育ての現実を描くハッピーサクセスストーリーです。お読みいただけたら、アマゾンの販売ページに星を付けていただけますでしょうか。そして感想をネットやSNSに投稿してください! 最終目標は映像化です。学童の世界をもっと世間に知らせたい、それだけが願いです。ぜひドラマ、映画、漫画にしてください!
 3月も残すところ明日の31日でおしまい。ということはいよいよ年度末ですね。放課後児童クラブの世界は年がら年中、職員の求人をしていますし年度内退職も多いので雇用面で年度末を強く意識することはあまりなさそうですが、それでも新卒採用を定期的に行っている事業者もあります。退職は区切りが良いので年度末、という人もいるでしょう。そうした年度末、年度初めで退職したり採用されたりした職員さん向けに、社労士ブログとして「給与の中身」について簡単に紹介しましょう。
 ※当面、ブログ投稿をSNSで告知いたしません。外部URLをX(旧ツイッター)に投稿することを繰り返すとアカウントが凍結されるおそれがあるようです。凍結されたら一大事です。
 ※ブログ投稿ですが、最近は他の業務との兼ね合いで投稿ができない日が増えています。ご容赦くださいませ。
 (※基本的に運営支援ブログと社労士ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブは、いわゆる学童保育所と、おおむね同じです。)

<給与の内訳>
 給与はどういうもので構成されているのかという意味での「内訳」です。なお、児童クラブに限らずほぼすべての仕事に当てはまることですので、児童クラブならでは、というものは原則的にありません。あるとしたら「労働契約を結んでいる、もしくは結んでいた事業者ならでは」というもので、のちほど紹介します。

 時給制ではなく月ごとに基本給が決まっている場合の給与の構成はおおむね次のようになっています。
・基本給(時給制の場合は、給与対象月の労働時間に時間給単価を乗じた額)
・各種手当(住宅手当や通勤手当、扶養手当、時間外勤務手当=いわゆる残業手当など。役職に応じた手当があることも多いです。)
この2つから、次の額が控除、つまり差っ引かれます。
・税金(所得税、住民税。なお実際の税額の計算は課税対象額の部分で計算されます。詳しくはお勤め先の給与担当または税理士さんに確認してくださいませ)
・社会保険料
・その事業所が設定している各種控除

 大雑把に紹介すると、(基本給プラス各種手当)から(税金、社会保険料、事業者が設定してる控除)を差し引いた額が、指定された口座に振り込まれる(もしくは、手渡し)ことになります。この振り込まれた(手渡しされた)額を、いわゆる「手取り額」と呼んでいます。差し引かれる前の金額を「額面」と呼んでいます。

 児童クラブの求人広告では大都市では20万円台半ばの基本給での募集が増えてきました。それでも大都市を離れると地方の県庁所在地でも18万円前後の基本給での求人募集がまだまだ一般的です。それらはすべて「額面」での給与額です。ですから手取りでは15万円~20万円弱の給与であることが多いのが、残念ながら児童クラブ業界の現実です。ここはすぐにでも変えていきたいところです。

<社会保険料に注意!>
 年度末、に限りませんが、社会保険料(この場合は厚生年金保険料と健康保険料。40歳以上は介護保険料も)を支払っていた職員の退職で注意していただきたいことがあります。それは、「月の末日で退職する人は、通常、退職する月の給与は今までよりぐっと少ない額になっていることが通例」ということ。これ、知っている人は「そんなの当たり前だのクラッカー」なのですが、案外知らない人も多いのです。よって、「ちょっとお給料の額が少ないんですが計算間違いしていませんか? まさか辞めるからって嫌がらせしていませんか? 生活が苦しくなっちゃうんですけど!」と、退職予定の方から激詰めされることがあるんですね。

 その勘違いは給与の支払い月および社会保険料の控除のタイミングによって生じるもので、決して事業者が計算間違いしているわけではないのです。次のことを押さえていれば理解できる簡単なものです。
「社会保険料は月単位で計算する」
 =3月31日で退職する場合、3月分の社会保険料が発生します。(社会保険は退職の翌日に資格を喪失し、資格を喪失した月の社会保険料は発生しない、というルールです。3月31日退職は4月1日が喪失日となって、この場合、3月いっぱいは社会保険がカバーしているので3月分の保険料が発生するのですね。資格を喪失する4月分の社会保険料はありません。なお3月30日で退職すると3月31日で資格喪失し、資格喪失をした月の保険料は発生しないので、社会保険料は2月分までの支払いとなります。)

「月末締めの当月25日払いの給与体系では、社会保険料は前月分が控除されている」
 =これは入社、入職した月の給与明細を見ていただけると理解が早いです。4月に採用された月給制の職員で、月末締め当月25日払い(=例えば4月の給与は4月30日まで計算し、支払いは4月25日に行うというスタイル)の場合、社会保険料は4月分から発生しますが通常、5月25日に支払う給与で社会保険料の金額を控除します。つまり1か月遅れなのですね。となると、3月31日付で退職する人が3月25日にもらう給与の社会保険料は、通常なら2月分の社会保険料になりますが。。。次の項目へ。

「社会保険料は、労働者が退職する場合、翌月処理のものを当月に処理することができる」
 =簡単に言えば、とりっぱぐれがないからですね。社会保険料は法令によって「必ず控除しなければならない」となっています。つまり、確実に納付することが必要なものです。ですから3月末で退職する人がいる場合、月末締めで当月25日払いの場合、3月給与では2月分の社会保険料を控除しますが3月分の社会保険料も併せて控除するのです。これが、「3月の給与は今までより、うんと少ないじゃないか!」の原因となるものです。

 けっして辞める人を事業者が嫌がらせしているわけではありません。そういう仕組みなのです。

<給与の支払いタイミングも>
 児童クラブは時給制の募集が結構多いですね。時給制の場合、給与の支払いが「翌月」となっていることが多いのではないでしょうか。つまり4月の給与は5月10日や5月25日に支払いがある、ということです。時給制の場合、「見込み」で計算することの不確実性が高いので、月給制のように「月末締め当月25日払い」のように、給与支払い日以降の勤務時間が不確実なままで給与を支払うことは通常ありえません。
(なお給与計算は日数がかかります。25日に口座に振り込まれる給与は、その数日までに金融機関に振込データが送信されます。職員が数人しかいないごくごく小さな児童クラブでは前日に給与担当者が職員の口座に個別に振り込むこともできましょうが、クラブがいくつかあって雇っている職員が十数人以上にもなれば、金融機関に給与振込データを送って処理することになるでしょう。その場合、給与計算が毎月20日ごろに終了していることも多いのです。給与計算は従業員数にもよりますが、案外と時間がかかるとても難しい業務なのです)

 つまり、月給制で働いていた児童クラブ職員が、次の転職先の児童クラブでは時給制だった場合、「3月にもらう給与で社会保険料がどどーんと引かれていて、思った以上に手取り額が減った」という状況である中で、「4月にクラブで働いた給与は、5月25日にならないと振り込まれない」ということが、起こりうるのですね。その場合、4月と5月の給与日までは何とか生活するのに金策に苦労するかもしれません。そういうとき、「3月の手取り額が予想以上に少なかった!」では、生活に困難が予想されることになりかねないのです。

 ですから、「月給制の場合、3月末で退職するときの3月の給与は、社会保険料が倍増してその分、手取りが減る可能性が高いですよ」ということを、ぜひ覚えておいてほしいのですね。

 そして4月から(というか、どんな月でも)転職して時給制の児童クラブで働き始める場合、「給与の最初の振込はいつからか?」ということを、必ず勤め先の児童クラブの本部に確認しておきましょう。

<雇用保険は例外>
 給与計算する側で時々、ミスをしがちなのが雇用保険料です。雇用保険も広い意味で社会保険料ですが、給与計算の現場では社会保険料には含めず、雇用保険料単独で扱うことがほとんどです。なぜなら、「雇用保険料は当月処理」が鉄則だからです。4月1日採用の月給制の人であれば、最初の給与(たいてい25日払いでしょうね)から雇用保険料が控除されます。月給の額で計算できるのでそのようなことが可能です。つまり3月末で退職する人がもらう3月25日の給与ではその3月分の雇用保険料だけが控除され、それでおしまいです。
 これを、雇い始めの月で控除しなかったとか、勤務最後の月で2か月分控除したとか、というミスが手計算の場合に置きがちです。給与計算ソフトを使っていると、こういうミスが起こらないようにしっかり表示されることがほとんどです。
 ですので、給与計算はプロに任せた方がよいですよ。児童クラブは1~2クラブの運営の規模の事業者では、なかなか外注の予算がなくて給与計算を外注できにくいのですが、給与計算ソフトを使って給与を計算することをお勧めします。5クラブや10クラブ程度になれば、社会保険労務士に給与計算を外注することが良いでしょう。

<月末締め当月25日払いの場合で4月に給与が入る場合>
 基本的には翌月払いの手当てのみ、です。基本給は退職する3月の給与でおしまいです。3月に発生した時間外勤務の集計を4月になって行うので、3月の時間外勤務がある場合は、その分の支払い、振り込みが毎月の給与の振込日になっている日に行われているかもしれません。あとは、翌月払いと指定されている手当の振込があるかもしれません。

<2026年度から新たな控除が始まりますよ>
 なにやら「独身税」という嫌な呼び方がメディアでされているようですが、子育て社会を応援するための重要な施策である「子ども・子育て支援金」の徴収が2026年度から始まります。月末締め当月25日払いの職員さんからは、5月の給与から控除、つまり天引きされます。金額はおよそ毎月550円と国から発表されています。保険料率は0.23%で、標準報酬月額という基準額(実際に個人がもらう給与の額はすべて標準報酬月額のある段階にあてはまるようになっています)にこの保険料率を乗じた額を収めることになります。

 この、子ども・子育て支援金は、医療保険制度による保険料(被用者保険=いわゆる民間企業での健康保険で、健保組合または協会けんぽ=、国民健康保険、後期高齢者医療保険)を納めている方に上乗せで控除される仕組みです。被用者保険の場合は事業主も折半して負担します。賞与にも、この子ども・子育て支援金はかかります。

 子ども・子育て支援金は、国によると次のためだけに使われるとなっています。
「児童手当の拡充」
「妊婦のための支援給付」
「出生後休業支援給付」
「育児時短就業給付」
「こども誰でも通園制度」
「育児期間中の国民年金保険料免除」

 児童クラブにとっても、育児中の保護者が時短勤務をすることが当たり前になれば、児童クラブを利用せずとも家庭で子育てできる余裕が生じることで児童クラブ現場の余裕が生まれていいことづくめです。そういうことに使われるというのが、この子ども・子育て支援金制度です。5月から給与の天引きが始まるということをしっかり覚えておきましょう。

<事業者が行う控除>
 労働者は、給与を全額、支払ってもらうことが当然であると労働基準法に定められています。これを「全額払いの原則」と呼ぶこともあります。(参考までに、賃金支払い5原則、というものがあります。労基法によるもので、通貨払い・直接払い・全額払い・毎月1回以上払い・一定期日払い、の5つです。社労士試験にとてもよく出題される分野ですが、それはとても大事だからです)
 ということで給与を職員の口座に振り込む前に事業者が給与から控除、つまり差し引くことができるのは例外であって、そのうちの代表的なものが法令によって控除が認められている税金(=源泉徴収)と社会保険料です。
 これ以外の事項の金額を控除する場合は、事業者は、過半数労働組合または過半数代表者と「労使協定」という約束をしてからではないと、給与から控除できないのです。

 児童クラブですと例えば学童ほいく誌を事業者で購入して職員に配布する、ということがあるかもしれません。そのほいく誌代金を職員の給与から差し引いて事業者が一括して購入、ということになっているかもしれませんね。その際の、ほいく誌代金を給与から差し引く場合にも、労使協定が必要である、ということです。労使協定がなく「昔からそうだから」の理由で給与から代金を控除することは法令違反です。しっかり労使協定を結ぶ必要があります。
 このほか、昼食代や駐車場料金、組合費など、結構、労使協定がないのに給与から天引き、控除されている場合が多いのではないでしょうか。必ず給与明細を確認しましょう。

 4月以降、新たに児童クラブに就職する人は、事業の運営本部や人事担当者に「事業者が控除する項目は何がありますか。労使協定書の写しを確認したいので見せてください」と申し出ましょう。この際、拒否されたり、もごもごと口ごもられたりでずるずると引き延ばしされるような場合、その事業者は「はずれ」の可能性があります。まともな事業者、コンプライアンスが定着している事業者であれば、あなたが求める以前に「うちは、こういう項目をこういう協定で事前に控除しています」と説明があるはずですから。それがない児童クラブ事業者に採用された場合は、「自分の権利は自分で守る」を念頭に、自分から情報を確認しにいきましょう。

<まとめ>
・3月末日で退職する月給制の職員がもらう3月分の給与では、4月分の社会保険料も併せて控除されている場合がほとんどなので、今まで以上に手取り額が少なくなっています。
・次に働く児童クラブが時給制の場合、最初にもらう給与が5月の給与日になる可能性があります。その間の生活費にはご注意を。
・社会保険料は基本的に前月分が控除されます。なので入職時は2回目の給与から控除され、退職時は2か月分控除されます。雇用保険料は当月に控除されます。
・事業主が控除するものについては法令で控除できる税金の源泉と社会保険料以外は、労使協定による事前の約束で決まったものだけです。何が給与から控除されるのか、必ず雇い主に確認しましょう。 

(お知らせ)
<社会保険労務士事務所を開設しました!>
 2025年9月1日付で、わたくし萩原が社会保険労務士となり、同日に「あい和社会保険労務士事務所」を開業しました。放課後児童クラブ(学童保育所)を中心に中小企業の労務サポートを主に手掛けて参ります。なお、放課後児童クラブ(学童保育所)に関して、労働関係の法令や労務管理に関すること、事業に関わるリスクマネジメント、生産性向上に関すること、そしていわゆる日本版DBS制度に関しては、「あい和社会保険労務士事務所」を窓口にして相談や業務の依頼をお受けいたします。「あい和社会保険労務士事務所」HP(https://aiwagakudou.com/aiwa-sr-office/)内の「問い合わせフォーム」から、ご連絡のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

 New! 日本版DBS制度について相談したい事業者さんにぜひともお勧めします。さいたま市南区の「エリーネ行政書士事務所」(https://www.eri-ne.com/)さんのご紹介です。行政書士の入澤えりな先生が、日本版DBS制度を中心に児童福祉施設や児童福祉の事業者様からのご相談に対応してくださいます。日本版DBS制度以外にも遺言作成・相続、介護タクシー等をメインにご相談に応じているとのことです。営業時間は平日9:30~17:00で、土日祝は応相談とのこと。ぜひ、困り事がありましたら頼ってくださいね。

 「一般社団法人あい和学童クラブ運営法人」は、引き続き、放課後児童クラブ(学童保育所)の一般的なお困りごとや相談ごとを承ります。児童クラブの有識者として相談したいこと、話を聞いてほしいことがございましたら、「あい和学童クラブ運営法人」の問い合わせフォームからご連絡ください。子育て支援と児童クラブ・学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と児童クラブ・学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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萩原和也