「打倒!小1の壁クエスト」第14話。だめなものは、だめ。それがそもそも「だめ」なんでしょ。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性、学童保育のあらゆる問題の解決を訴えています。

 「打倒!小1の壁」クエストです。主人公は、来春にお子さんが新1年生となるご夫婦。小1の壁は、実は学童保育にたくさんある、学童保育ならではの慣習にあることに気付き始めた勇者夫婦です。

 ~打倒!小1の壁クエスト~第14話:だめなものは、だめ。それがそもそも「だめ」なんでしょ。

(前回までのあらすじ)思うところがあって会長になった勇者夫婦。気になっていた「開所時刻」と「お弁当」についてアンケートを取ったたところ、お弁当作りが負担、開所時間がもっと早い方がいい、という意見が多数派でした。

 6月下旬の役員会。会長の勇者夫婦以外はそろって学年が上の人たちです。「まあとにかく、いろいろ教えてください。なんでも話してください」というスタンスで役員会に臨んでいたこともあって、いろいろ話が出てくるようになりました。「前から思ってたのよね。朝8時開所はちょっとキツイって」「お弁当もさ、どうしても忙しい時ってあるのよね。毎日でなくてもいいから週に数日、なんか業者に頼めたらって」

 そこに勇者ママが職員側の姿勢を説明しました。「お弁当は親が作るのが当然だという話ですよ。それが愛情であり、食育でもあるって。学童は親が作ったお弁当が当然だ、という意見でした」

 「えーやっぱり。なんかもう絶対変わらない、って感じ」と、あちこちからため息が。
そこで勇者パパが話し出しました。「アンケートの結果は次の保護者会で説明します。もう2カ月もしないで夏休みだから、今から業者を探してお弁当配達というのも、朝8時開所を変えるのも、まず無理です。でも、多くの保護者たちが、何とかならないかなという気持ちを持っていることが分かったのが大事ですし、将来に向けて働きかけていく根拠にもなります。でもせめて、夏休みの間、たった1日だけでもいいので、外部のお弁当を食べるという日を試してみたら、と思うんです。その時は、学童の先生たちには一切迷惑をかけない。本当は、そういうのって、運営側がやるべきなんですが、それは今では無理なので、あえて、こちらで、お弁当の手配とか、回収とか、集金とかをやってみる。本当はそれも保護者がやるべきではないと思うんです。でも、何かを変えるには、思い切ったこともやってみることが必要だと、思うんです」

「それって、私たちも手伝うってことですか?」と役員の中から声が上がりました。
「役員会のメンバーでやる、というのも無理だと思うんです。なので、やれる人だけ、やってみたい人だけ、それも保護者全員に呼びかけて希望者だけでやってみる、というのはどうでしょう」と勇者ママの提案に「それならいいかも」という声があがりました。
「あとは、先生がOKしてくれるか。どうしてもOKが出なかったら、この計画も実施できませんから」と勇者パパが引き取りました。

 数日後。お迎えで学童に来た勇者パパがベテラン職員に役員会の議事録を渡すと同時に、お弁当デーの話を切り出しました。議事録にさっと目を通して表情を曇らせたベテラン職員は「困りますね。私たちの職務は子どもたちが昼食をしっかり食べる時間も見守るということも含みます。たった1日でも外部のお弁当を入れる、それが親御さんたちがボランティアが手伝うと言っても、職員としては許可できませんから」と、にべもありません。
 「だめという理由はどこにあるのですか?」と努めて冷静に聞き返した勇者パパ。
「だめなものはだめなんですよ。私たちは子どもたちのために常に考えて行動しています。今まで積み重ねてきたことを勝手に変えようというのは困るんですよね。私たちは子どもたちの事を常に考えてやっています。親御さんたちも、子どもたちのためにもっと考えて動いてみてはどうでしょうか」
「そうですか。子どもたちのために考えてお仕事されているということですね。それは感謝しています。そうだということも、お仕事ぶりを拝見すれば伝わってきます。でも、学童保育の役割はそれだけではないはずですよ。保護者の子育ても支援することも役割に入っていますよね。学童保育は、子どもを真ん中に、職員と保護者が手を取り合って、とよく言いますよね。でも、いまの先生の話ぶりだと、職員と保護者は、手を取り合っていると私には思えないんですよ。で、だめというのは、結局、何がだめなんですか?今までやってきた仕事の流れを変えることが嫌だから、だめなんじゃないんですか?それと、役員会の人たちも、子どもたちのために考えて行動していますよ。先生たちこそ、もっといろいろと考えてみたほうがいいと私は思うんですがね」

 結局、この日の話はまとまりませんでした。役員会のSNSで報告すると皆が沈黙する中、1人のメンバーが意見を出しました。「今度の保護者会で、アンケートの報告をするときに、抜き打ちで多数決を取ってみたらどうでしょう。それでも先生たちがダメという限りは実施できないと思います。でも、本当はこうしたいんだ、という気持ちは保護者会に参加している先生たちにも伝えられると思うのです」

 「それはいいと思います。そうしましょう」と勇者夫婦はほっとしました。同じことを考えていたからです。

 「では来週の保護者会で、やるとしますか。とにかく、気持ちだけは伝えましょう。将来に希望をこめて。だめなことはだめ、というのがだめなんだと思うんですよ。それはだめ、あれもだめ、だめだだめだに縛られて何もしないことの方が、だめなんだと。」

  保護者会。アンケートへの協力の感謝と結果報告を終え、多くの人が開所時間の繰り上げと、お弁当の外部配達を希望していることが分かったと紹介した後で、勇者パパが切り出しました。「ところで、先生とこの結果を話したところ、お弁当の外注は絶対に出来ないという話でした。役員会では1日だけでもという話になったのですが、それも許可が出ませんでした。なので、当面はこのことはできないと思います。それでもお聞きしますが、1日だけでもお弁当を外から頼んでみるアイデアが良いと思う人は、いますか?いたら手を挙げてほしいんです」

 パラパラと手が上がりました。ひそひそと話が出た後で手を挙げる人も。一方、ベテラン職員さんは前年度の会長さんと何やら話をしています。前会長の手はあがりませんでした。

 「はい。だいたい8割ほどの方が賛成ということでした。これはとても大事なことだと思います。これですぐにどうこうとはならないと思いますが、私たちの気持ちとしてこうだ、ということはしっかりと共有していきたいと思っています。学童は子どもたちが過ごす場ですし、私たちにとっても生活のために大事な場所です。だからこれからも、学童保育は、こうであってほしいということを、いろいろな場面で考えていくことを大事にしたいと思います」

 今まで続いていることを変えるのはどこの世界であっても大変です。そう簡単に物事は変わらないのです。現実は大変厳しい。ですが、変わりつつあることも生まれてきました。それは「みんなで考えていくきっかけ」を持てたことから生まれた「学童保育所は、こうであってほしいな」という気持ちが、少しずつですが芽生えてきたことです。分厚い壁に、ゆっくりと育つ植物がとりついて、根を伸ばし始めたというところでしょうか。「打倒!小1の壁」のクエストで、小1の壁についてさらに打倒法を考えましょう。(たぶん続く)

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育に関連する多くの問題、小1の壁の問題解決や、保護者の負担感といった学童保育に立ちはだかる多くの問題の解決について、学童保育の運営に関して具体的な実践と経験を積んだ代表が、具体的な解決策を提示することが可能です。

 学童保育の運営についても、育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

 (このブログをお読みいただきありがとうございました。少しでも共感できる部分がありましたら、ツイッターで萩原和也のフォローをお願いします。フェイスブックのあい和学童クラブ運営法人のページのフォロワーになっていただけますと、この上ない幸いです。よろしくお願いいたします。ご意見ご感想も、お問合せフォームからお寄せください。出典が明記されていれば、当ブログの引用はご自由になさってください)