「打倒!小1の壁クエスト」第12話。小1の壁は、もしかすると学童保育全体に備わっているものかもしれない

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性、学童保育のあらゆる問題の解決を訴えています。

 「打倒!小1の壁」クエストです。主人公は、来春にお子さんが新1年生となるご夫婦。小1の壁は、学童に入れないということだけではないと、薄々、気づきつつあるようです。

 ~打倒!小1の壁クエスト~第12話:小1の壁は、もしかすると学童保育全体に備わっているものかもしれない?

(前回までのあらすじ)4月の最初から学童保育を利用し始めた勇者夫婦。春休み中の開所時間が遅いとか、「面倒を見切れない?」とか、いろいろ気になることばかりです。学童の常識は世間の非常識、もしかしてそうかも。

 小学校では新1年生の給食も始まり、勇者夫婦は「お弁当作り」のタスクから解放されました。勇者パパがいつも自分の分にプラスして子どものお弁当を作っていた(いつも中身は前夜の残り物か、冷凍食品。それでも子どもはしっかり食べてくれました。よかった!)ので、大変は大変でしたが、なんとか乗り切れました。そして4月下旬の土曜日の夜。「保護者会総会」に参加することになりました。なにせ、「欠席の方は自動的に役員又は係を割り振ります」と、学童内で配られたプリントに記載されていたら、休むわけにはいきませんね。

 学童施設には大勢の保護者と子どもたちが大勢詰めかけて大変にぎやか。まだ仲良しさんがいない勇者夫婦は子どもと一緒におとなしく室内で座って開始を待ちました。何か手伝おうにも、新1年生の保護者ですから、勝手がわかりません。同じように静かに座って待っているのは、新1年生の保護者です。会釈したり「何をするんですかね」という程度の会話を交わしたぐらいです。

 総会は職員ーあの3月の説明会で勇者パパとプチ対峙したベテラン職員ーの、年間計画の説明で始まりました。夏休みにキャンプがあるとのこと。コロナ渦で中止が続いていたもののコロナが収まってきたので再開するようです。「うちの学童は子どもたちに元気いっぱい過ごしてもらいます。学童の理念に沿って子どもたちの指導をします。宿題は、時間は設定しますが、やるやらないは子どもの判断に任せます。それ以外は引き続き学習などの時間は設定しません」と職員。勇者夫婦は「宿題をやるように声がけぐらいはしてくれるよね」と、ひそひそと話を交わしました。

 「保護者の皆さんには、必要に応じて運営に参加していただいています。今年度も、学年ごとの連絡網の設定をお願いします。また、会計担当となった人は、閉所時間を過ぎた人からのペナルティ料金徴収の担当も従来通り、行っていただきます。施設担当となった人は、定期的に、施設点検を行って報告書を作成して運営本部に職員経由で提出するのも、従来通りです」と職員。
 「連絡網って、運営本部や職員が、保護者に連絡するんじゃないの?それに、何、料金徴収って、それ、保護者がやるべきことなの?施設点検は職員の仕事でしょうに」と勇者ママはパパに小声で話しかけました。
 「保護者が運営に関わるってそういうことなのか。でも、法的な責任では、まずいんじゃないかな」と勇者パパ。
 もちろん、そんなことを皆に問いかけられる雰囲気ではありません。

 話の主は会長ーこの人も3月の説明会で存在感を押し出していた人ーに変わりました。どうやら会長の仕事は今日までで、新会長をこの総会で決めるようです。
 「立候補の人はいますか?あーいないようですね。では、いつも通り、くじびきで決めます。欠席した人は、私が代わりにくじを引きます」と会長。

「あの、ちょっといいですか?」と、こらえきれなくなった勇者ママが挙手で話しかけました。総勢で40人ほどいる参加者たちが、一斉に視線を勇者ママに向けます。
「え、何ですか?」と会長。
「くじ引きで決めるということですが、役員とか係は、みんな大事だと思うんですが、とりわけ大事なポジションがありますよね。会長とか、会計とか。そういう役員も、くじ引きですか?」と勇者ママ。
「立候補の人がいないようなので、そうなりますね。いつもそうですから」と会長。
「やりたい人がいないなら仕方ないとは思いますが、くじ引きで会長になった人が、負担に感じて学童を辞めてしまうとか、あるいは、考えたくはないですけど、もし何かあった時に、責任を取れるのかどうか、そういうことを考えると、くじ引きで決めるのはどうかと思ったんですが」
「立候補が無いと、いつまでたっても決まりません。土曜の夜なので早く終わりたい人ばかりです。私も去年、くじ引きで会長になりました。でも特に何もなくやってこれましたから。くじ引き以外で、すぐに決まる方法でも、あるんですか?あと、途中で退所しても役員は年度が終わるまでやることになっていますので」と、少しいらついた様子の会長さんです。
「くじ引きでもじゃんけんでも、決める方法はあると思いますけど、大事なのは、そういった役員とか、係にきまった人が、しっかりと責任を負うことに異議が無いと理解していれば、いいと思います。それと、学童を辞めた人ら保護者会も辞めることになるのが普通だと思うんですが、辞めた人が保護者会の役員や係をずっとやるというのも、ちょっと分かりにくい、責任は取れるのかな、と思ったんです」

「そういうことは、今、話し合うことではないので。この方法で異議は出ていませんから問題ありません」と、あくまで方針を曲げない会長さんのようです。周囲も少しざわつき始めました。「そんなことでもめたら、帰るのが遅くなるじゃない」という不満げな人たちばかりのようです。

「あー、分かりました」と、突然、勇者パパが立ち上がって話しだしました。「それでは、私、学童に入ったばかりですけど、会長、やります。立候補します。いいんですよね、立候補しても?」
「ちょ、ちょっとパパ、本気?」とあわてた勇者ママ。子どもはゲームから目を離しません。

 意表を突いたのか、会長も職員も、すぐにはリアクションができませんでした。確かに、立候補がいないからくじびきになりかけていたので、まさか、立候補が出たのに「ちょっと困ります」とは、言えません。

 「では、うちら夫婦で、新年度の会長を務めさせていただきます。よろしくお願いします」と勇者パパは一礼しました。実は内心、はらわたが煮えくり返っていて、「お金も扱う責任のある団体が、法的責任を負う役員をくじ引きで決める?ありえない。運営組織が行うべき業務を保護者に押し付ける?事業運営責任の放棄だ、ありえない」といらだっていたのでした。
「きっとこれが、本当の意味の小1の壁、いや、学童の壁だ。おかしい壁はぶち壊すしかない」と、勇者パパは思ったのでした。

 そのほかの役員や係は、立候補がいなかったので、くじ引きで決められました。すべての役員と係が決まり、総会の前年度の決算と今年度の予算についても、誰も質問することなく承認されました。全体で1時間ほどで終了。
「それでは新会長から、軽くご挨拶を」と「前会長」に促された勇者パパ。
「学童保育に関わりだしたばかりですが、私たち夫婦は、学童の子どもと親のために頑張ります。ついては、新年度の役員に決まった方、この後ちょっとだけお時間をください。連絡先だけ交換したいのです。どうぞよろしくお願いいたします」と挨拶して、その場を引き取りました。

 思いがけず、学童の世界に、ずぶずぶとはまりかけている勇者夫妻。新年度の新役員さんに話しました。「いろいろ不思議と言うか変な事ばかりだと思っていました。学童保育は、なんていうか、壁ばかりだと思ったのです。皆さんと一緒に考えて、変えていきたいと思います」。すると、どうでしょう、くじ引きで選ばれた人たちですが、「ぜひ頑張りましょう」「よろしくお願いします」と、笑顔で言葉が返ってきたではありませんか。

 その様子を遠巻きに眺めていた前会長とベテラン職員。新旧世代で、何か一波乱があるかもしれませんぞ?

 経験がないまま保護者会の会長という大役を自ら引き受けた勇者夫婦。学童には壁がたくさんあると気付いたのでしょう。「打倒!小1の壁」のクエストで、小1の壁についてさらに打倒法を考えましょう。(たぶん続く)

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育に関連する多くの問題、小1の壁の問題解決や、保護者の負担感といった学童保育に立ちはだかる多くの問題の解決について、学童保育の運営に関して具体的な実践と経験を積んだ代表が、具体的な解決策を提示することが可能です。

 学童保育の運営についても、育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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