「学童110番」が、あったらいいな!放課後児童クラブに関わる問題やトラブルは多種多彩。自助努力にも限界!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)に関わる人たちが直面する問題を受け止める仕組みが必要だと私は思うのです。
 ※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。

<放課後児童クラブで直面する問題、トラブル>
 放課後児童クラブに関わる問題、トラブルといっても実に幅広いものです。制度や仕組みに起因すること、保護者、職員(それも現場職員と管理者、経営者に分けられる)に関すること、そして子どもに関する内容があります。行政、学校、地域の人に関しても問題、トラブルが起こり得ます。それぞれの立場が異なるので、問題やトラブルとなる対象もまた幅広いのです。

 制度や仕組みがもたらす問題、トラブルとしては例えば次のことが挙げられます。
・施設不足による待機児童の発生。小1の壁の問題。
・大規模状態の常態化。子どものストレスの増大によるいざこざ、トラブルの多発。
・施設の老朽化。特に夏季における空調の能力不足と、耐震面。

 保護者が直面する問題、トラブルとしては、例えば以下のことがあるでしょう。
・保護者会に関わること。役員や係に対する不満や反発、惰性で行っていることへの不満。運営責任との関係
・クラブの利便性に関わること。開設時間が短いことでワークライフバランスとの釣り合いの悪さ。
・児童クラブの活動に関する理解度の濃淡に起因する職員とのすれ違い
・利用料の滞納

 職員が直面する問題、トラブルとしては例えば以下のことがあるでしょう。
・雇用、労働に関すること。休日、休憩が取れない、割増賃金の支払いがない。低賃金。
・人手不足による過重労働の常態化。
・職員同士の人間関係の悪化。退職に至る事態も頻発。
・長期間開所や昼食提供など新たな仕事が増える一方、増員の取り組みが遅れがち。
・職員の資質向上、生産性向上に関する取り組みの遅れや理解不足。
・経営の困難さ。厳しい資金繰りに悩まされる。

 子どもに関しての問題も多いですね。
・他者とのコミュニケーション能力の弱さが招くいざこざ、トラブルの多発。
・基本的な生活ルールの理解に欠ける子どもの増加。
・発達面において配慮が必要な子どもの増加。

 行政や学校、地域住民との関係においても問題、トラブルは絶えません。
・行政当局の放課後児童健全育成への無関心。「預かり場」で充分とする理解と姿勢が招く、質の低い育成支援。
・行政当局による現状への無理解、無関心(大規模状態の放置、設備更新の消極的姿勢、補助金獲得に後ろ向き)。
・学校にありがちな児童クラブへの蔑視的対応。
・児童クラブに対する騒音や送迎時の保護者の往来に対する苦情。

 これらはほんの一例です。私が児童クラブ運営の法人トップを務めていた期間は、職員や保護者による故意の犯罪行為への対応から、ちょっとした誤解に基づく行き違いまで、問題やトラブルの幅や質、程度の広がり(巻き込まれる人数の多寡、期間の長短)も実に様々でした。おそらく今この瞬間にも、日本のどこかの児童クラブで「え、そんなことが?」というまさかの問題、トラブルが起こっているに違いありませんね。

<相談窓口が少ない!というか、ほぼ無い>
 児童クラブに関して困ったことは当然、その組織内で相談して解決につなげる努力をします。運営主体(事業者)が弁護士や税理士、社会保険労務士を顧問として契約していれば、相談ができるでしょう。しかし、いわゆる士業の方々に報酬を支払って顧問に就いていただける事業者はそう多くありませんし、顧問といってもいつ何時でも即座に対応してくれるとも限りません。特に、エキスパートであっても、児童クラブの実態や特質に詳しくない士業の方々では、一般的なアドバイスについては万全でも、より具体的に、「痒い所に手が届く」アドバイスや指南については実のところ、なかなか思うようなものが得られないことが往々にしてあります。
 事業規模が小さな事業者では、そうした専門家に相談したくとも、主に費用面からして選択肢として上がらないことになります。自助努力には限界があります。
(なお、児童クラブを利用する保護者には、それぞれエキスパートがいることが多いものです。士業だけでなく医療、建設建築、通信関係など。無償の労働力としてそれら保護者の能力を当てにする姿勢が児童クラブの世界に根付いていますが、本来は好ましくありません。保護者が自ら積極的に自分の知識や能力を提供するという場合を除き、本来は対価を支払わずに人間が持っている能力を利用しようと考えるのは間違っています。何より、何か問題や事故、事件が生じたときの責任問題が極めて複雑になります。「あなたのアドバイスに従って行ったら、より事態が悪化して相手方に訴えられた。この責任はあなたにある」と、善意で助言してくれた保護者に言えますか?よって、基本的には個々の保護者の能力に頼ることは止めましょう)

 職員が直面した問題、トラブルについては職員が加入している労働組合が対応することがあります。それなりに心強い存在として活動をする場面はありますが、そもそも労組が無い職場が多いこと、労組が関わることに嫌悪感を示す経営側が現実にいるためにそこでまた新たな問題を生むことにもなります。

 児童クラブの業界のまとまり、集まりに相談することもあります。職員が行う育成支援、子どもや保護者との関わり方に関する問題については、児童クラブの業界のまとまりというものは職能集団ですから有益なアドバイスが得られることが多いでしょう。しかし、業界のまとまりは、ごく少数の法人化した団体を含め、構成メンバーは同じ職員や保護者、ごく少数の専従職員ですから、「児童クラブの勢力伸長を目指す活動」には熱心であっても、子どもへの支援や保護者対応など実際に自らも関わっている事柄以外において現実に発生している問題やトラブルについては、話を聞くことぐらいしかできないことが多いものです。それでも少しは安心をもたらすことはできても、本質的な改善にはなかなかつなげられません。

<あったらいいな!学童110番>
 そこで、わたくしが考えるのは、ある程度の期間、常設化した「学童110番」です。ネーミングが昭和から平成時代のようなちょっとダサいものですが、「ここに連絡すれば、専門家から具体的な助言を得られる」という仕組みです。上記のように、児童クラブに関する問題は多種多様です。法律面といっても、お金の問題があったり、けがに関する賠償の問題があったり、労働関係の問題があったりと、とても幅が広いですから、弁護士や司法書士から社会保険労務士、税理士などそれぞれの分野のエキスパートで、しかも児童クラブのある種特殊な世界の「空気感」を理解できる方が、相談相手として対応できることが理想です。
 それら士業方面の人だけでなく、放課後児童支援員の経験が豊富(単に年数が長いという意味ではなく、深さにおいて豊富ということ)や人、保護者会運営について経験が豊富な人、行政の仕組みや手続きに関して詳しい人など、児童クラブが関わる方面における問題やトラブルに助言を出せる方が必要です。また、児童クラブは市区町村によって本当に実態がバラバラです。いろいろな運営パターンがあります。それら、児童クラブの多種多様な実態についても知識や理解がある人の存在も欠かせません。

 今の時代ですから別に電話だけでなくても、オンライン面談(顔を隠してももちろん構わない)やチャット相談でも充分です。常設化といっても毎日24時間は到底無理ですから、毎月数回、何時から何時までという形での相談窓口ができれば、児童クラブに関して困っている方々の、心強い味方になれると私は思うのです。

 児童クラブは、小学1年生の半数が利用するようになった社会的インフラです。それだけ問題もトラブルも多く生じます。ですからぜひ、困った時の相談窓口が必要です。私もいろいろ相談を受けることがありますが、どうしたって限界ばかりです。やはりそれぞれの分野のエキスパートによる集合知で、困った人に寄り添い、支えることが、ひいてはこの児童クラブに関する健全な理解と発達に役立つと私は考えています。

<おわりに>
 放課後児童クラブは、国と行政が責任をもって行うべき児童福祉の仕組みです。とはいえ、残念ながら、とても軽視されていると言わざるを得ない実情です。しかも、クラブを設置してもその運営を金儲けしか頭にない企業が引き受けたら、とても、弱きものを助ける福祉の意味をないがしろにされてしまうことになりかねません。実際、車いすの子どもが入所を拒否されるという、とんでもない差別的事案が、この現在の児童クラブで起きていたのです。そういう深刻なトラブルによって追い込まれた人を支え、助ける仕組みが必要です。
 その仕組みで利益が得られるはずはありません。しかし、あらゆる方面にそれぞれの思惑で発展を始めてしまった児童クラブというカオスの世界にて、困った人たちを放置してはなりません。崇高な志、ボランタリズムで動き出し、いずれはその活動に共鳴、共感した勢力から支援を受けられる日を信じて、誰かが動き出さないといけない時代になったのだと、わたしは感じます。

 どうか、立ち上がって行動してみませんか?児童クラブで困っている人たちを、もうこれ以上、ほったらかしにしてはいけないと思いませんか?

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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