学童保育所はどうして朝早くに開所しないのですか?

 学童保育所(放課後児童クラブのことを指している場合がほとんどです)は、夏休みや春休み、学校の臨時の休業日(開校記念日など)や土曜日は、朝から開所します。朝といっても保育所のように朝7時から開所しているところはまだまだ少ないです。朝早くに開所できない理由はあるのでしょうか?

 こども家庭庁の調査(令和5年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況)によると、夏休みなど長期休業期間中における児童クラブの開所時刻について、最も多いのは8:00 ~ 8:59の時間帯で全体の62.6%(16,062クラブ)となっています。だいたい午前8時きっかりの開所が多いでしょう。それより前となると、7:00 ~ 7:59の時間帯では全体の35.9%(9,221クラブ)と、がくんと減ってしまいます。まだまだ午前7時台の開所のクラブは少ないですね。

 理由としてもっとも考えられるのは「朝の時間帯に従事する職員を確保することが難しい」ことがあります。この難しいということは2つの意味があって、1つは単純に「(低い時給とあいまって)働き手が見つからない」ということ。もう1つは、「市区町村の決まりで午前8時開所となっているので、それより前の時間にクラブを開いても市区町村から予算の手当がなく、従事する職員に支給する賃金を支払う予算が事業者独自では確保できない」ということがあります。

 多くの地域では午前8時より前に子どもを受け入れるときに基本の利用料とは別に保護者負担を求めています。受益者負担ですが、おおむね月額1,000円から高くても3,000円程度。それでは人件費すらままなりません。夏場ですとエアコンをフル稼働しますから電気料金もかかります。費用の面で、職員を配置したくても雇えないという現状があります。

 これらは、早朝開所に充てるための特別の補助金を市区町村が独自に用意することで解消ができることでもあります。要は市区町村がどれだけ児童クラブの早朝開所に意義があるか理解しているかどうか、によるでしょう。

 なお、児童クラブで働く職員たちの意識にも早朝開所の抵抗感があります。児童クラブは、就労等で家庭を留守にする子育て世帯の子どもを受け入れる施設ですが、子どもの育ちを大切に考えるあまり、「子どもが保護者となるべく長い時間、過ごせることが子どもにとって最善」という、なんだか保護者の就労を支える使命とは合致しない感覚を抱く児童クラブ職員は実のところ結構います。その意識では、「朝でもできるだけ長く子どもは保護者と一緒にいられるように」という考えになり、児童クラブの職員自体が、早朝開所に抵抗がある、という本音の意識を持つという事になるのです。これはなかなか表沙汰にはなりませんが、本音のところはそうなのです。もちろん「朝早く起きるのが嫌」ということもあります(通常、児童クラブは午前10時や11時から勤務開始、公営クラブでは午後からの勤務も多いので朝はゆっくりしていられる、つまり「朝が弱い」人にはもってこいの勤務時間)。

 働く時間ばかり長くなって保護者が子どもと過ごす時間が短くなるのは確かに問題です。それは国全体、社会全体で解決に取り組むべき問題です。育児中の時短勤務が所得保障とセットで当たり前になれば、朝の出勤時間について子育て世帯に余裕のある勤務形態も可能となるでしょう。しかし現実に、朝早くに出勤しないと仕事に間に合わない、仕事が続けられない子育て世帯がある以上、そういった子育て世帯を支える社会の仕組みとしての児童クラブは、役割を果たしていくべきでしょう。児童クラブが今はしっかり支えるから早く社会全体でもっとゆとりのある子育て環境を整えてください、ということが多くの児童クラブの関係者の切なる願いでもあるでしょう。

 (運営支援による「放課後児童クラブ・学童保育用語の基礎知識」)