経営側も働く側も、変形労働時間制を上手に利用して、効率的な勤務時間を設定しよう。得られるメリットは大!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性、学童保育のあらゆる問題の解決を訴えています。

 変形労働時間制は、いまだに労働組合を中心に、導入に否定的な反応が目立ちます。ここ数年、学校の教員を対象に変形労働時間制の導入をめぐって労働組合や教職員の団体が反対する動きが報じられています。反対の理由は、「長時間労働が増える」ということのようです。9月4日にも、岐阜県内の教職員の団体が変形労働時間制導入に反対する要望書を提出したとニュースで報じられました。

 変形労働時間制に対する反発に多い「長時間労働が増える」という理由ですが、確かに「増える日が出てくる」のが正解です。しかし、変形労働時間制は、長時間労働を是認している制度ではありません。単純なことですが、労働基準法にある「週40時間、1日8時間」(特定業種を除く)の法定労働時間(この時間を超えて働くと、時間外労働になる。割増賃金が必要となる)の原則は変形労働時間制でも守られます。それは、「一定の期間を平均して考えると、週40時間、1日8時間」となるからです。

 つまり変形労働時間制というのは、労働時間のデコボコがあって、それは平均すると法定労働時間の枠内になるものであって、そのデコボコは「忙しい日に長く働いて、業務が立て込んでいないときは短く働く」ということです。

 現実には、学童保育の世界でも、1年単位の変形労働時間制を導入している団体もあります。私はかつて運営していた団体において1か月単位の変形労働時間制を導入しました。効果はてきめんでした。

 変形労働時間制を導入する以前は、4週間で8日の休日を設ける制度を導入していました。これは変形休日制と呼ばれるもののバリエーションです。休日も労基法によって週に最低1日は確保しなければなりません。ただし、これも4週間の間に4日の休日が確保されることが就業規則に明記されているなら、例えば一定期間の週に休日がなくても構わないのです。

 この場合、4週間のうち2週間が週6日間勤務で、残り2週は4日間勤務というシフトを設定することが可能です。しかし、週40時間という法定労働時間は適用されますから、例えば1日8時間勤務で週6日勤務の場合は48時間となり、8時間は時間外勤務となって割増賃金が必要となります。しかし、4週間という期間で考えると、週40時間という労基法の法定労働時間内には、収まっているのです。

 その調整を可能とするのが、変形労働時間制なのです。法律の枠内で、効果的な予算の使い方を実現できる制度です。変形休日制に替えて1か月単位の変形労働時間制を導入することで、週に6日勤務する日も、週に4日勤務する日も、平均すれば週40時間労働に収まります。
 実際、私がかつて導入したのはまさにこのケースでした。適法に、時間外労働を大幅に削減することができたのです。

学童保育の場合は、例えば1か月の間で、作成しなければならない書類(主にシフトや出退勤記録、経費精算など)が月末に集中しがちです。となれば、その期間の1日の労働時間を10時間として、忙しくない期間の労働時間を1日6時間とする、ということが可能となります。

 私は学童保育事業においては、1年単位の変形労働時間制より、1か月単位の変形労働時間制が運用しやすいと考えています。1年単位の場合は、1日10時間、週52時間という上限があります。これでは、例えば夏休みに宿泊を伴うキャンプや、デイキャンプであっても、1日10時間以上の勤務が必要となる場合に、時間外労働が発生することになるからです。1か月単位の場合は、1日の労働時間の上限がありません。もちろん、1日12時間の労働時間となった場合は、どこか別に、労働時間を短くした労働日を複数設定することが必要になりますが。

 この意見に対して「もらえるはずの割増賃金がもらえない。やはり労働者に不利だ」という声があるでしょう。この意見に対しては、「個人の事だけを考えるその思考が問題だ。組織全体で時間外労働による割増賃金が大幅に削減できるなら、それに充てていた予算を、質の高い働き方をしている職員に多く支払うことが可能となる。優秀な職員なら、今までより高い給料をもらえる可能性があるということだ」と、私は反論します。

 しかも、ダラダラと、仕事を緩慢にしている人が時間外労働になって割増賃金を得て、仕事をテキパキと効率的に終わらせることができる「仕事ができる職員」に割増賃金が出ないという、学童保育業界に実はありがちな問題も、解決することができるのです。しかも、仕事ができる職員に多く支払う報酬の原資が確保できるのです。

 導入に際しては、綿密な手続きが必要です。1か月単位であっても、シフトが完成すると同時に、勤務シフトを職員に周知させねばなりませんし、勤務シフトに設定できる勤務時間パターンも、あらかじめ就業規則に明記しておく必要があります。
 何よりも、変形労働時間制は、残業をゼロにする魔法の制度ではありません。単に、平均すれば法定労働時間に収まるだけ、のことです。「変形労働時間制だから残業代は発生しない」と、いい加減なことを言って割増賃金の正確な算定をサボる、バカな事業者、経営者がいるから、変形労働時間制に対する拒否反応が生まれているのです。

 法律に基づいて、正しく運用すれば、労使双方にメリットがあるのが変形労働時間制です。学童保育の世界にも、もっと広まることを私は期待しています。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の労働生産性向上のため提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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