学童保育所での昼食提供。賛成ですが、大前提をクリアする必要があります。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育事業の質的向上のためにぜひ、講演、セミナー等をご検討ください。

 学童保育所での昼食提供に関するニュースがありました。NHKのニュースサイトで7月2日午後8時7分に配信された記事です。一部を引用します。
 「いわゆる「学童保育」をめぐり、夏休みなどの長期休暇中に預かっている児童に昼食を提供している施設はおよそ2割だったことが、こども家庭庁の調査でわかりました。こども家庭庁は保護者のニーズも高いとして、地域の実情に応じて昼食の提供を検討してほしいと呼びかけています。(中略)こども家庭庁は、長期休暇中の昼食の提供は保護者のニーズも高いとして、地域の実情に応じて提供を検討してほしいと呼びかけています」
 (この記事、いわゆる「学童保育」という書き出しです。記事を書いた人は、学童保育について正確な知識をお持ちであると推測できます)

 記事中には、今年5月に全国1633の区市町村を調査した結果、1万3097施設のうち昼食提供は23パーセントにあたる2990か所だったということです。

 私はこの記事を見て「ついに来たか」と思いました。といっても、6月28日に、小倉将信こども政策担当相がと京都練馬区内の学童保育所を視察したことを報じる記事に、学童保育所における昼食提供を呼び掛けるという内容を記載していたメディアもあったので、いずれ、学童保育所と昼食提供について話題になるだろうな、と予想していただけです。

 学童保育に関する昼食について、たくさんのことを申し上げたいのですが、今回は結論と、その結論を支える大きな理由のみ、記します。

 まず、学童保育所における昼食提供について、私は賛成です。
 賛成の理由は、児童福祉の観点からです。いわゆる保護者負担の軽減(お弁当作りの負担)については理解をしていますが、それが最大の理由ではなく、二番手ぐらいですね。
 児童福祉の観点というのは、食事をとれる経済的余裕がない世帯が増えている中、困窮世帯(主に相対的貧困なのですが)の問題で、夏休みなど長期休業期間中、学校給食がない時期における食事の提供機会を確保することができる、ということです。
 6月26日の配信記事で、NPO法人による子育て世帯への調査結果が伝えられていました。困窮家庭の90パーセントで、給食が無くなる夏休み中の食事について不安だという記事でした。
 このように、夏休みなど長期休業期間中における食事の機会の減少について、学童保育所における昼食提供が可能となれば、困窮世帯における食の不安の軽減につながることは、児童福祉の意味で重要だと考えているからです。

 よって、学童保育所における昼食提供についての大前提として、「受益者負担(つまり自費負担)の原則を前提としても、低世帯所得についての食事提供費用は行政からの補助が必要である」ことを、私は訴えます。

 次に、大前提として主張したいのは、新たな業務が加わることによる業務量の軽減が必要、つまり公費による放課後児童支援員と補助員の配置人数を増やすことが必要です。学童保育所での昼食提供が実施されると、単純に業務量が増えますから、それを踏まえた職員数の増員が欠かせません。職員に関する補助金の考えは、常勤1人と非常勤1人(さらに地域によってプラス1人)ですが、週5日の食事提供を考えると、常勤2人は必要です。

 まとめますと、「低所得世帯に対する費用補助」と「職員数の増員」という大前提をクリアして、ぜひとも、「児童福祉の観点」から、学童保育所での昼食提供を早急に実施していただきたいと考えます。

 さらに裏読み、深読みします。学童保育所における昼食提供は、「放課後子供教室」や「全児童対策事業」と相性がいいと、私は思います。政府が推進している放課後子供教室と放課後児童クラブの一体型や連携型、そして一体化(=全児童対策事業)は、基本的に小学校内のスペースを利用します。
 ということは、仮に、全児童対策事業や、放課後子供教室と放課後児童クラブの一体型や連携型を実施している場合、小学校における給食のシステムが活用できるということです。すでにあるシステムを稼働させるだけですので、あとは自治体が予算措置さえすれば可能です。
 給食は、子どもに必要な栄養のバランスをしっかりと考えて提供できますから、子どもへの食事として最適です。学童保育所における昼食提供を実施する際は、ぜひとも、給食のシステムを活用していただきたいと私は希望します。給食が活用できない地域は、弁当配達が有力な選択肢となるでしょうが、私としては、「地域の学童保育所の運営組織が連携して共同で学童保育所向けの昼食とおやつの調理配送システムを設立(もしくは地域の食事提供業者と協同で設置)して活用する」ことを提案します。

 最後に1点。学童保育所の昼食提供については長らく保護者から、負担軽減からその希望を望む声が上がっていました。それがようやく、解消に向かう流れが出きたのでしょうが、今までの保護者の声に対して学童保育の業界は、どう向き合っていたのでしょうか。「子どもの食事を親が手掛けることは子育ての基本であり、それが愛情」という情実面で語られて整理されていたように私は感じています。親子の絆の大切さはお弁当の準備をしなくなったら全部失われるわけではありません。
 むしろ、学童保育業界で、運営者の協働で調理配送システムを考えて設立を模索するべきだったのに、結果的に、放課後子供教室と放課後児童クラブの一体型や連携型、全児童対策事業を(おそらく)念頭に置いた昼食提供の必要性を国に呼びかけられてしまったと私は残念に思います。完全に後手に回っています。

 やはり、日本の学童保育業界には、しがらみがない、本当に職員や運営者の現状と将来を踏まえて子どもと保護者の支援を考えることができる業界団体(職能団体)が必要だと、私は改めて認識しました。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育所と児童福祉の関わりについて、種々の提言を行っています。また、学童保育所の運営について生じる大小さまざまな問題について、取り組み方に関する種々の具体的対応法の助言が可能です。個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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