学童保育の運営に、アップデートが欠けています。現在のフルタイム勤務の時代に即した学童保育所の開所が必要

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性、学童保育のあらゆる問題の解決を訴えています。

 学童保育をめぐる話題、問題として取り上げられることが急激に増えた「小1の壁」。そもそも、学童保育所に入所できるかどうかが、小1の壁の本質だったのですが、最近の小1の壁はどんどん枚数が増えているようで、「入所した学童保育所の、子どもの受け入れ時間帯と、保護者の勤務時間帯がうまくあわず、子どもの送り迎えが間に合わない。結果として学童保育所の利用ができない」という、利用上における困難も、新たな小1の壁となっています。

 厚生労働省が調査発表した「令和4年度の放課後児童クラブの実施状況」(調査は令和4年5月1日時点)では、午後6時半以降に開所している学童保育所(この場合は、放課後児童クラブのこと)についてデータがあります。午後6時半を超えて開所しているクラブ数は16,216か所で、全体の60.8%だそう。前年比で158か所、増えたということです。平日に開所している放課後児童クラブ数は令和4年で26,680か所となっています。

 かなり多くの学童保育所が午後6時半を超えて開所していますが、それでもまだ4割のクラブは午後6時半には閉所します。また、注意が必要なのは、「午後6時以降、あるいは午後6時半以降の子どもの受け入れは、別料金」というクラブが結構多いのです。子どもの受け入れは午後7時ごろまで行ってくれても、基本的な料金ではなく追加料金が必要となると、利用する側としては釈然としないものがあるでしょう。

 もう今の時代は、午後7時の閉所が絶対に必要です。最低限でしょう。むしろ、近い将来午後7時半閉所ということを考えた事業構築が必要です。

 その理由としては、当然のことながら、「夫婦ともにフルタイム雇用で就労する形態が増えている」からです。フルタイム雇用とは、所定時間労働や時間外労働をして退勤時間が午後6時や午後6時半、という就業スタイルです。勤務地と居住地がある程度の距離がある場合は、午後6時退勤で実際はその10~20分後に会社を出て帰るとしても、地元にある学童保育所にお迎えにたどり着くのは午後7時ごろになってもおかしくありません。就業スタイルの多様化で、保護者の就労先が、必ずしも学童保育所の近隣あるいは同じ自治体の区域内にあるとは限りません。通勤に時間がかかる保護者が、特に大都市近隣の都市部では増えているので、そのような地域に立地している学童保育所は、子どもの受け入れ時間について、保護者の利便性を十分に配慮した運営体制が求められます。

 こういうことを主張すると「保護者の利便性ばかり考えて、働く人のことは考えないのか」、あるいは「長い時間、子どもと保護者が離れることによる子どもの育ちの悪影響を考えないのか」という反対意見が必ず出ます。わたくしは、はっきりいって、そのような意見は、論評にも値しない単なるわがままであり、学童保育(=放課後児童クラブ)の社会的ニーズの達成を放棄している愚考だと、断定します。前者の疑問に対しては「社会を支えるために存在が求められている事業であり、学童保育所で働く人の利便性を最優先として運営している事業ではない」と反論しますし、後者の疑問に対しては「保護者と子どもの結びつきはそんな軽々に傷つくものではない。時間の長短だけで親子関係を見られないようでは育成支援の専門性に欠ける」と指摘するでしょう。「長く働かされる自分たち、かわいそう」ということが言いたいのでしょうが、長時間労働に対する処遇の改善は、学童保育所の開所時間の是非そのものとは直接、関係しない別の問題点として理解し対応するべきです。

 なぜ午後6時台開所がいまだに多いのでしょう。私なりの勝手な推測を紹介します。
 学童保育の歴史を考えると分かりやすいのです。そもそも学童保育は、1950年代、法律に規定されていないまったく独自の任意の事業として自然発生的にスタートしました。学童保育を必要とした当時の保護者たちには、教員や看護師といった学校関係者や医療従事者、公務員の方が多かったと聞いています。当時はまだまだ専業主婦が多かった時代ですが、その中でも女性が働くことが多い職業は存在し、そのような職に就いている夫婦やひとり親家庭のお子さんが、学童保育を必要としたことは当然です。
 ただ、そういう場合でも、母親の勤め先は学童保育所の比較的、近隣であったことが多いと想定されます。同じ自治体や、あるいは隣の市区町村など。もちろん、県庁や中央省庁などにお勤めの方もいらっしゃったとは思いますが、地元の学校の先生や役所、病院といった職場が多かったのだろうと想像できます。

 すると、あまり、長い通勤時間はかからないですね。午後5時や午後5時半に退勤して、午後6時ごろにはお迎えに行くことができた保護者が多かったと想定でき、それが学童保育所の閉所時刻として実績化されていったと考えられます。逆に言えば、午後6時台の閉所時刻の学童保育所が多かったのは、その閉所時刻において、ある程度の子ども受け入れニーズを満たすことができた、といえるでしょう。

 その後、夫婦共働き世帯が急増し、かつ、ひとり親家庭も増えました。就労形態が多様化し、男女雇用機会均等法以降、女性のフルタイム勤務も増えました。夫婦そろって午後6時ごろの退勤、かつ、勤務先が電車で1時間近くということも、珍しく無くなりました。勤務形態、就労形態が、この30~20年前から徐々に変わっていったの対し、学童保育所の運営スタイル、あるいは子ども受け入れ時間帯に対する考え方は、現代に対してアップデートされていないのです。

 具体的な例があります。国が示している放課後児童健全育成支援の補助単価で「長時間開所加算額」という区分があります。平日分で、1日6時間を超え、かつ18時を超えて開所する場合の補助金ですが、「18時を超えて開所」が長時間開所として取り扱われていることに留意してください。国の意識も、「午後6時過ぎ」の学童開所は長時間、と認識していることが分かります。(もちろんそれは、出発点において学童保育所の運営実態が先にあって、それに補助金を割り当てたということが言えるでしょうが)

 私は提案します。まず、国の長時間開所加算について、「19時を超えて」開所する場合の補助金とするべきです。午後7時まで職員を必要人数分、配置するためには当然、人件費がかかりますので、基本的な運営費補助の増額は当然、必要です。
 その上で、学童保育の運営主体、運営側も、「保護者の就労、生活を支えるという社会的使命を果たすために、午後7時までの児童受け入れは当然」という認識を持って事業を構築することが必要です。「長い時間、働くことが嫌だな」と思う低レベルの職員に対しては、放課後児童健全育成事業の存在意義を理解させるべく職員への意識改革も合わせて必要です。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育が社会にとってさらに必要となるように、問題解決に取り組み、かつ、運営姿勢について種々の意見提言を行っています。学童保育の運営に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った運営の方策についてその設定のお手伝いすることが可能です。

 育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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