学童保育が抱える「残念な体質」を変えていこう。

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。

 7月8日(土曜日)に、私が取材を受けたインターネットメディア「HintーPot」の記事が配信されました。夏休み期間中に学童保育所(放課後児童クラブ)の入所ができなかった事例を取り上げたものです。夏休みなど、小学校の長期休業中に学童保育所を利用したい人は大勢いるのですが、学童保育へのニーズが高い地域は通年で学童保育所の入所者数が多いこともあって、夏休みなど短期期間だけの利用希望については、なかなか認められるケースは少ないと考えられます。その状況は、学童保育が抱える「残念な体質」にあるというのが、本日のブログの趣旨です。

 そもそも、新年度が始まる時点で学童保育所に入れない「小1の壁」が年々、高く険しくなっている印象がある中で、短期入所への対応がまったく追い付いていません。これはすべからく、学童保育へのニーズを過小評価して必要十分な施設の整備を怠っている国と行政の怠慢であり、責任です。
 最初に指摘しておきますが、学童保育の世界にある「残念な体質」の、最大かつ最も残念なことが、この、必要な施設を十分に整備しようとしない国と行政の姿勢にあります。学童保育の中でも放課後児童クラブは、区市町村に整備の責任があります。もちろん私も、多くの自治体が学童保育所の設置に毎年、努力していることは承知しています。ただし、政治も行政も「結果がすべて」です。結果的に、学童保育所の待機児童が減ることが無いのは、その努力が不足していると、言わざるを得ないのです。

 そしてもう1つの「残念な体質」を指摘します。それは、学童保育の世界そのものが抱えています。学童保育の現場だけでなく運営側にも共通しますが、「子どもの育成支援は、時間をかけて継続的に行うもの。子ども同士の人間関係も時間をかけて作られていく。だから、短期入所は学童保育の理念にそぐわないから、反対」「学童保育所は子どもが育っていく場所。子どもの預かり場、託児所ではない」という意識が、極めて強く存在しています。つまり、「年度当初、あるいは途中入所でも、その後に長期的な学童保育所利用がある子どもならいいが、1~2カ月の短期利用者には育成支援は必要ない。託児所ではないのだから」という考え方です。
 この考え方は、育成支援の専門性を考えると、理解できる点はあります。放課後児童支援員等が継続的に子どもと保護者に関わることで、育ちや子育てを支援することが育成支援とするならば、短期利用者について十分な育成支援ができないと思われているからです。育成支援の専門性を追求すればするほど「短期利用者にはそぐわない」という意識になりがちです。

 しかし、私はその考え方は間違っていると考えます。夏休みなど、長期休業中の期間であっても、いや、それが数日間であっても、子どもが生きて過ごしている時間に、育成支援の専門家が関わることで何か無駄なことがあるかといえば、そんなものはないはずです。子どもが過ごしているその一瞬でも、子どもの成長に無駄な時間はない。1分でも子どもに関われる時間があるなら、放課後児童支援員等がその育成支援の専門性を持って接することは、絶対にできるはずです。
 また、たとえ数日間であっても、子育て中の保護者を支援していることに変わりはなく、むしろ、本当に必要な局面で保護者の子育て生活を支援できているのであれば、それこそが、学童保育の存在意義を確たるものにすることです。

 私が勝手に思うのは、現場の支援員等については「短期の利用では、その子と自分が関係性を築きあげる前にその子の学童利用が終わってしまう。それでは、子どもが言うことを聞いてくれないし、他の子どもとトラブルになるし、面倒くさい」という本音の意識があるからだと想像します。運営側については、その短期利用のための書類手続きやデータの整理などで時間を取られたり、短期利用で増える利用数に応じた非常勤職員の確保が困難など、技術的な点で「面倒くさい」と思っているからでは、ないでしょうか。
 また、特に保護者が運営に関わっている学童保育所には、「私たちはずっと運営に関わって時間を費やしているのに、短期の利用者は学童の保護者会の役員や係をやらない。私たちが苦労して運営していることを利用しているだけ。タダ乗りみたい」と憤慨している保護者がいることも、容易に想像ができます。

 みんな、間違っています。学童保育所は、何のために存在しているのですか。支援員の働きやすさのために存在しているのでも、運営側が楽に仕事ができるためでもありません。社会が学童保育所を必要とするから存在しているのです。社会が必要とするから、補助金も交付されるのです。学童保育というシステムが存在することが重要であって、そこで働いている人に利便性を増やすためにではありません。
 運営に関わる保護者には、本当に頭が下がる思いですが、だからといって、それがくじ引きだろうが立候補だろうが、運営担当の役員に就いた以上、事業として、学童保育を必要とする者のために出来る限りの機会を提供することは、運営担当者の責務です。それが嫌なら、運営担当を断ってください。役割を引き受けた以上、しっかりやってください。(もちろん、私は何度も言っていますが、学童保育事業を行うにあたってボランティア保護者の運営参画は、もう取りやめるべきだと考えています。事業展開はあくまでビジネスで考えるべきであって、このような心情的に揺さぶられる短期利用の判断などが合理的な考えのもとに対応できるかどうか不確実です)

 学童保育が大事だと言いながら、なかなか子どもの居場所作りの整備に予算を投じない政治と行政。
 育成支援という専門性にこだわるあまり、目の前の子どもにしか育成支援の必要性を理解できない学童保育の従事者たち。

 学童保育は必要なシステムですが、国民からそっぽを向かれたら、存在する意味を失いますよ。

 確かに、夏休み前の段階で、子どもでギュウギュウ詰めの学童保育所に、短期利用者を受け入れる余裕はないでしょう。その場合に短期利用希望者の受け入れを断るのはやむを得ないです。その場合は、施設整備に消極的な国と行政の怠慢が、短期利用がかなわなかった子どもと保護者を苦しめているのです。子どもの居場所は学童保育所だけでなく、子どもの支援という点ではまったく不十分ですが放課後子供教室だってあります。ファミリーサポートの充実や、児童館の整備など、いくらでも整備の方策があるはずです。
 また、学童の運営側についても、仮にあと数人の受け入れができる余地を作り出そうと思えば作り出せる状況にありながら、それを怠って短期利用の受け入れを機械的に断るのは、学童保育側の怠慢です。

 学童保育の現状は何もかも足りないことは百も承知です。施設数も、施設の広さも、必要な職員の人数も、必要な職員を雇えるだけの予算も、足りていません。だからといって、「学童には入れないの、ごめんね」では、その子、その保護者の生活は守れません。限度はあるのは承知ですが、できる限りの対応を、行政も、学童側も、行ってほしいと強く望みます。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育所など子どもの居場所整備について、また学童保育業界が抱える種々の問題や課題について、具体的な提案を行っています。また、学童保育所の運営について生じる大小さまざまな問題について、取り組み方に関する種々の具体的対応法の助言が可能です。個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。

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