地域に根差した学童保育事業者の切実な声。「いくら良い事業をしていても結局、大企業が有利」。これはダメだ!

 学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。

 2月12日、宮城県石巻市で、子どもの多角的な居場所作りに取り組んでいる「放課後こどもクラブBremen」の寶鈴子代表にお声がけいただき、Bremenさん主催、現地の子育て団体4団体さんも共催で「子どもにとって良い放課後児童クラブを考えよう」と題した勉強会で講師を務めました。貴重な機会をいただき、また多くの方にご参加いただき、心より感謝しております。

 参加された方から多くの切実な声をお聞きしました。特に深刻なのは、広域展開事業者と競い合う状況になったとき、どうやっても負けてしまう、これはどう取り組んだらいいのでしょうか、という話でした。石巻市では民間委託として、公募プロポーザルで民間事業者を募集するようになりました。現在は、地域に根差した小規模な団体と、全国シェアナンバーワンの企業が選ばれています。まだ公営クラブはありますが、いずれ民営化されるでしょう。

 来年度から民営が始まるクラブの事業者について公募プロポーザルが行われたところ、地域に根差した事業者はすべて選ばれなかったとのこと。そのことについて、「自分の組織もプロポーザルに参加したのだけれど、大手と300点ほどの差がついてしまった。そこまで点差が開くと、どこをどう改善の工夫をしてよいかが分からないのです」という悩みがあるということでした。選定基準について資料を拝見させていただきましたが、他地域における指定管理者の選定にかかる選定基準、審査基準と同様、選ばれる基準が「運営事業者としての基盤がしっかりしているか」「財務状況はどうか」「これまでの実績はどうか」という、「事業者としての体力=企業の規模の大きさ」に評価の重点が置かれており、肝心の子どもの育成支援については、数多くある選定基準のほんの数個しかありません。

 学童保育所(この場合は、放課後児童クラブ)を運営する事業者を選ぶ基準が、肝心の「運営支援の質に関する理念、提供される支援の質の高さ、内容の充実具合、取り組み方」という、育成支援に関わる中核的なことではなく、育成支援に含まれることではあるとしても「人員体制」「他地域との連携」だったり、事業者の規模が大きければ大きいほど有利となる「管理運営体制、財務状況」だったりに重点が置かれ、配点が重視されているようでは、公平な選考はできないと私は考えます。まして、地域に根差した事業者が点を獲得しようがない、他地域での実績を選定基準とされては、一方的な差別的選考と言ってよいでしょう。

 学童保育の運営事業者を選ぶにあたって、市区町村が、自らの考え方に沿った事業者を選ぶこと自体は、合理的な理由があります。その合理的な理由が、育成支援の充実を実現するには困難な結果をもたらすのであれば、実は合理的と思われた理由が、合理的ではなくなります。市区町村の行政経営の目指す目標は市区町村にとって合理的であったとしても、児童福祉法やこども基本法に規定されている児童福祉や放課後児童健全育成事業の理念、こどもの意見表明権等、こどもの幸せな生活を守る権利にそぐわなかったとしたら、合理的であると思われた理由は、合理的ではなくなるということを、市区町村は理解しなければなりません。

 市区町村は、あくまでも「質の高い育成支援を実施することができるか否か」を軸に、その土台の上に、経営の合理性に問題はないか、管理運営体制は万全なのかを判断するような選定基準にするべきなのです。もちろん、いくら子どもや保護者が手放しで高く評価する育成支援を行っているとしても、事業運営における管理運営体制が規則規程類に従って実施されていない、あるいは誰が運営の責任者なのか判然としないなど、補助金を受けて運営する以上、事業体として確実に運営されていない団体は、選ばれてはなりません。その点において、営利の広域展開事業者は得点が高くなるのは当然であり、そのこと自体を不当に評価してはなりません。

 地域に根差した事業者は、その弱点である経営規模、財政基盤を向上させる取り組みはしなければなりません。質の高い育成支援を行っていても、財政基盤があまりにもぜい弱で、来月の事業継続も実は不安であるという状況は、公共の児童福祉サービスを提供する事業者としては不健全です。質の高い育成支援を行っている、こどもまんなかの学童保育を行っているというのは、錦の御旗ではありません。人を雇い、人の命を守る事業を行っている以上、事業者として堅実な事業運営、つまり組織の経営を行っていることは当然なのです。

 まとめましょう。
・市区町村は、学童保育所を運営する業者を公募で選ぶ際は、高いレベルの育成支援を実施できるか、実施しているかを中心に評価するべきだ。事業規模が大きいだけで得点が有利になる現状の選定基準は問題である。
・学童保育は安定して事業継続がなされなけばならない。いくら質の高い育成支援を行っていても、安定して継続的事業運営ができない事業者は選ばれなくても当然。よって、地域に根差した学童保育の事業者は、事業規模を拡大して組織の基盤を強化するべきだ。

 前者は、特に学童保育の業界団体が問題提起を常に社会に投げかけ、メディアを動かして事態の改善につなげるべきです。このままでは、あと数年のうちに、日本のほとんどの地域で、ただ単に企業の規模が大きいだけの事業者が学童保育を担う時代に完全に移り変わってしまいます。そうなったとき、子どもたちの育ちの質を社会が保障することはできなくなってしまいます。まさに今、取り組むべき問題です。
 後者は、伝統的な学童保育の業界からすればまったく存在しなかった考え方です。しかし、良質であっても事業規模が小さいだけで機械的に公募における競争で負け続けている現在、何が敗因なのかを考えると、その敗因を招く要素を改善することは当然の対応です。その当然の対応を取らない業界団体こそ、私に言われせば、敗因そのものです。そんな業界は解体されてもやむを得ないでしょう。

 時代の急速な変化に対応できていない学童保育の業界。被害者は子どもであり、現場で働く職員であり、しっかりと事業を運営したいと苦闘している良心的な運営者です。その流れを早く変えなければなりませんよ!

 育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その策定のお手伝いをすることが可能です。

 子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!

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