許しがたい、学童保育の職員による性犯罪。事業者は常に最大限の注意を払って事案発生を防ぐことが必要!
学童保育運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。子どもの育ちを支える学童保育、保護者の安定した生活を支える学童保育、そして社会を支える学童保育を支援する「学童保育運営支援」の重要性と必要性を訴えています。学童保育の問題や課題の解決に向け、ぜひ皆様もお気軽に、学童保育に関するお困りごと、その他どんなことでも、ご相談やご依頼をお寄せください。講演、セミナー等をご検討ください。
残念なことに、学童保育(本稿では、広義の学童保育)の職員による児童への許しがたい犯罪行為がまた明らかになりました。12月8日の朝からNHK等で報じられた、東京都内にある学童保育施設で起こった性加害の事案です。同日18時24分更新のNHKのネットニュースを引用します。
「東京や神奈川などで民間の学童保育を運営している会社の30代の元社員が、勤務していた施設で複数の児童の体を触るなどして強制わいせつなどの罪で逮捕・起訴されていたことがわかりました。(中略)この運営企業が都内で運営している学童保育で勤務していた※(記事では実名)被告(30)が、去年8月からことし2月ごろにかけて、児童3人のズボンの中に手を入れて体を触るなどしたとして、強制わいせつの罪に問われていることがNHKの取材で明らかになりました。このうち1人の児童に対しては体を撮影したとして、児童ポルノ禁止法違反の罪で追起訴されているということです。」
これが事実であるなら本当におぞましい卑劣な犯罪行為です。裁判で厳罰に処されることを望みます。
記事では、この事案について運営企業が公表していないことを問題視しています。被害児童の保護者に取材し、保護者が公表を望んでいる旨を報じています。
私がこの報道で思うのは以下の点です。
・学童保育の事業者は、職員に対し、常に不法行為、犯罪行為を起こさせないように徹底的な研修教育を行いつつ、少しでも不審な点があれば積極的に調査することが必要。リスクマネジメントを徹底させること。
・事業者は、被害者のプライバシーと事業の社会的責任を常に冷静に比較し、個人の人権を侵害しない前提の下、社会的利益を追求することが必要。それがクライシスコントロールでもある。
前者は、子どもを大勢受け入れる事業であれば当然、事業者が行うべき行動です。事業者が営利企業であろうが、非営利法人であろうが、保護者会であろうが、あらゆる事業者は、徹底して、人権侵害がいかに愚かな行為であるかを職員に叩き込まねばなりません。暴力や、窃盗や横領なども許されざる犯罪行為ですが、とりわけ、大人の目の届かない状況で長期間継続的に行われることがあり、被害者となった子どものその後の人生を長く苦しめることが多々ある性犯罪については、どんな手段を使ってでも防ぐという断固たる決意と行動を、事業者は組織的に遂行する必要があります。弁護士など法の専門家による講義、啓発書の読書と学習、いろいろな方法があるでしょう。
私が実際に行ったことは、弁護士による法令順守研修(毎年1回。かつ新人研修で実施)、職員同士のワークショップで児童への性的虐待に関する学び合いの実施、全施設を対象に「死角」の点検、指導役の管理職による現場巡視などがあります。
もし、雇用している職員が児童に対して何らかの犯罪行為を行った場合、その児童や保護者に与える直接的な損害だけではなく、事業者自身もまた、その企業の価値を傷つけられます。それはその後の事業活動を困難にさせる可能性もあります。事業を継続的かつ安定的に営むためには、「職員、従業員、もちろん役員も含め、企業価値を毀損しない犯罪行為は絶対に起こさない」という目標を実現し続けることが求められます。
そのために、財政コスト、時間的コストを費やすことは、当たり前に必要です。
後者は、実際に起きてしまったあとの対応です。今回の事例では、この点で事業者と被害者側保護者との間で意識の深刻な食い違いがあり、それが結果的に報道という形で広く社会に知れ渡ることにもなりました。
事業者が雇用している者が起こした犯罪行為に事業者は、どう対応すればいいのか。これは極めて重要な課題です。対応1つで、事業者のその先の事業展開を左右します。犯罪行為が、特に被害者のプライバシーを配慮することが必要となる事案であれば、なおさら慎重な対応が求められます。
事業者が行うべき対応は、再発防止であり、被害回復です。
どうして犯罪行為が起こったのか。背景は何か。組織の体質が影響したのではないか。職員の研修教育体制に不備はなかったか。職員の不審な様子に同僚は気が付かなかったのか。気が付いていたならなぜ早期発見に至らなかったのか。これを解明することは、再発防止策につながります。
被害回復は、事業者が行う対応で最も重要とするべきです。被害を受けた子どもへの対応。その治療に際しては事業者は徹底的に責任を背負う覚悟を内外に示すことです。また、法律上、損害賠償責任を負うことになるので、真摯に対応することが求められます。
これら一連の対応で必ず心がけねばならないのは、被害者のプライバシーです。被害者の個人の特定はもちろん、具体的な犯行の詳細等も、事件に直接関係する者以外に知らせる必要はありません。通常は、広く公表されるべきものではないと私は考えます。捜査機関もおおむね、そのような対応をしていることと思われます。事案そのもののと被疑者の公表はあっても、事業者名等は伏せて報道発表することが多いと思われます。
ただし、今回の事案では、被害者の保護者が、再発防止の一環として、事案があったことを公表するように事業者に求めています。その場合、事業者としては、保護者の気持ちに沿った対応が必要であったと私は考えます。企業価値を考えても、被害者側から批判を受ける形で結局は報道などで事案が社会に知られるのと、被害者側の意向を十分に受け止めて事業者側から公表するのとでは、社会が受ける印象は相当程度、異なるからです。もちろん、捜査機関の要請で事案の公表等について捜査に支障が出るなどの場合があるときは、捜査機関の要請に従うことになるのは当然です。
つまり、被害者の心身ともに重大な影響を与える事案の場合、その被害者(子どもの場合は、代理人となる保護者)の気持ちに最大限寄り添うことが重要です。それが結果的に、危機的な状況を早期に収束させる方法でもあります。クライシスコントロールは、事案の拡大を防ぎ早期に収束させることであるなら、被害者側の心情に寄り添う対応こそ、最善のクライシスコントロールになります。
最後に枝葉末節なことですが、今回の報道で記されている事業者は民間学童保育所と、市区町村からの補助金を交付される放課後児童クラブの双方を運営しているようです。事案の舞台となったのが放課後児童クラブなのか、民間学童保育所なのかは定かではありませんが、報道記事での保護者の説明によると、各種習い事や送迎があるとのことでしたから、民間学童保育所で起こったことなのかもしれません。放課後児童クラブであるなら市区町村の管理監督責任もありますが、民間学童保育所は市区町村とは関係がありません。むろん、どちらであっても子どもへの犯罪行為は起こしてはならない、起きてはならないことではありますが、市区町村の監督や指導が及ぶ範囲なのか、あるいは純然たる民間の営利事業であるのかは、私としては気になるところです。
育成支援を大事にした学童保育所、かつ、社会に必要とされる学童保育所を安定的に運営するために「あい和学童クラブ運営法人」が、多方面でお手伝いできます。弊会は、学童保育の持続的な発展と制度の向上を目指し、種々の提言を重ねています。学童保育の運営のあらゆる場面に関して、豊富な実例をもとに、その運営組織や地域に見合った方策について、その設定のお手伝いすることが可能です。
育成支援の質の向上に直結する研修、教育の機会を提供するとともに、個々の学童保育所運営者様へ、安全安心な子どもの居場所づくりとその運営手法において、学童保育組織運営について豊富な経験を持つ代表が、自治体や学童保育運営事業者に講演や具体的な助言、アドバイスを行うことが可能です。もちろん、外部の人材として運営主体の信頼性アップにご協力することも可能です。
子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。どんなことでも「あい和学童クラブ運営法人」に、ご相談ください。子育て支援の拡充に伴い、今後ますます重要視されていく子どもの居場所づくり事業の充実のため、一緒に取り組んでいきましょう。萩原は2024年春に「知られざる学童保育の世界」(仮題)を、寿郎社さんから刊行予定です。ご期待ください!良書ばかりを出版されているとても素晴らしいハイレベルの出版社さんからの出版ですよ!
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