令和6年度の放課後児童クラブの実施状況調査その2:昼食が初登場。登録率いよいよ5割に!「小4の崖」に注目!

 放課後児童クラブ(学童保育)運営者をサポートする「あい和学童クラブ運営法人」代表の萩原和也です。放課後児童クラブ(いわゆる学童保育所)の実施状況(その年の5月1日時点の状況)がこども家庭庁から公表されました。運営支援ブログでは最新の実施状況について、その結果と運営支援独自の推察を数回に分けて投稿します。2回目は、今回初めて調査対象に選ばれた昼食と、いまだに一般的ではないおやつ、そして児童の登録率を考えます。
 (※基本的に運営支援ブログでは、学童保育所について「放課後児童クラブ」(略して児童クラブ、クラブ)と記載しています。放課後児童クラブはおおむね学童保育所と同じです。)

<初めて登場した、昼食の調査>
 令和6年の放課後児童健全育成事業の実施状況は、こども家庭庁のホームページにて公表されています。
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/69799c33-85cb-44f6-8c70-08ed3a292ab5/de9d9a49/20241223_policies_kosodateshien_houkago-jidou_51.pdf
 この実施状況は毎年5月1日時点の状況を国が取りまとめて公表しているものです。今回の調査結果は2024年(令和6年)5月1日時点のデータとなります。

 昼食に関する調査結果が登場しました。初登場ですから前年(令和5年)の調査結果はありません。さっそく調査結果を転載します。
 昼食の提供あり  11,026クラブ(43.0%)
 昼食の提供なし  14,609クラブ(57.0%)

(提供方法)※昼食提供をしている11,026クラブを対象
 事業所内部での調理   1,753クラブ(15.9%)
 事業所による手配    5,420クラブ(49.2%)
 保護者会等による手配    535クラブ(4.9%)
 その他         3,318クラブ(30.1%)

 昼食提供は4割を超えています。これはなかなか多いのではないでしょうか。こうなると、国が昼食提供を積極的に呼び掛けた2023年夏以前の数値を知りたくなりますね。昼食提供をしていない地域、事業者は、4割超の実施の現状を前にすると、昼食提供を求める保護者の声を無視できなくなるのではないでしょうか。
 提供方法は、事業所による手配、つまり事業所が取りまとめる宅配弁当を示すのでしょう。「その他」が3割を占めておりかなりの割合ですが、いったい何が「その他」に相当するのか示していただきたいですね。行政や事業者が構築した弁当注文システム、アプリを使って保護者が自身で発注する形態を指すのでしょうか?
 感心したのは、提供方法で「保護者会等による手配」を入れたことですね。これは保護者負担の存在を可視化するものです。しかし、割合としてはかなり少ないですね。おそらくですが、国が呼び掛けるずっと以前から昼食を提供していた児童クラブは保護者会主導で始めたはずですから保護者会の手配があり、この数年で始めた場合は弁当注文アプリなどの利用などがあるのでしょう。そうすると、昼食提供そのものがこの数年のブームですから、保護者会手配のクラブは少数派であることの想像はつきます。

 来年度、昼食提供が5割を超えるかどうかに注目ですね。
 それと国には、料金、値段の調査もお願いしたいですね。定額徴収ならその料金、弁当なら下限と上限の値段を吸い上げていただきたい。そして、自治体からの費用補助の有無と、補助があるなら補助額も、減免制度の有無も、調査項目にしていただきたいですね。

<おやつ調査>
 おやつの提供が、わずかながら減っています。どういうことでしょう。放課後児童クラブ運営指針にも重要性を含めて記載されているのですが、おやつ提供に後ろ向きな地域、事業者は確かにあります。調査結果は次の通りです。
 おやつの提供有り (令和6年度 22,972クラブ、89.6%)(令和5年度 23,186クラブ、89.8%)
 おやつの提供無し (令和6年度  2,663クラブ、10.4%)(令和5年度  2,570クラブ、10.0%)

 おやつ提供があるクラブは、214クラブ減りました。おやつ提供がないクラブは、93増えました。ここで頭をよぎるのは、児童クラブのクラブ数全体が、自治体の数え間違いで減っていることです。児童クラブ数は令和6年で25,635か所、前年比で172か所減っています。この減った172か所は支援の単位をクラブと勘違いして数えていたものと私は推測しています。この減った172か所のクラブが、仮におやつ提供をしているのであれば、このおやつ調査項目にも反映されますね。減ったのが214クラブですから、おそらく172の数え間違いの場所の多くでおやつ提供をしていたでしょう。そしてそれを上回っておやつ提供を取りやめたクラブがある、ということが推測されます。推測の上の推測ですが、少なくとも、おやつ提供が頭うちになっているという恐れがあります。 

 昼食提供は当然、進めていいのですが、それより先に、子どもの活動を支える補食でもある、おやつの提供を100%にするよう国は指導するべきです。そしてこのおやつの提供の調査も、提供方法やおやつ料金、自治体の補助の有無も調査項目に含めていただきたいと強く要望します。

<小学生のうち、どれだけの人数が児童クラブを利用しているか>
 文部科学省が取りまとめた「学校基本調査」による小学生の児童数と、今回の、こども家庭庁の実施状況による児童クラブの登録児童数によって、小学生のうち児童クラブに登録、つまり利用している割合を計算します。

小学生の児童数は次の通り。なお、小学生は学校基本調査のうち、公立小学校とします。(他に私立、国立があります)
小学1年生の男女 468,021  447,366  合計 915,387
小学2年生の男女 483,605  459,399  合計 943,004
小学3年生の男女 499,807  477,979  合計 977,786
小学4年生の男女 506,072  480,127  合計 986,199
小学5年生の男女 510,270  485,812  合計 996,082
小学6年生の男女 516,236  491,658   合計 1,007,894
合計       2,,984011  2,,842341  合計 5,826,352

児童クラブの登録児童数は次の通りです。令和6年度です。
小学1年生 453,642 小学2年生 411,145 小学3年生 331,228 小学4年生 183,998 小学5年生 91,997 小学6年生 47,942 合計 1,519,952

上記2つの数値から児童クラブの登録率を計算してみます。
小学1年生 49.55% 小学2年生 43.59% 小学3年生 33.87% 小学4年生 18.65%
小学5年生  9.23% 小学6年生 4.75% 合計 26.08%
(令和5年は次の通り 小学1年生46.86%、小学2年生41.29%、小学3年生31.43%、小学4年生16.84%、小学5年生8.19%、小学6年生4.14%、合計24.41%)

 私は令和6年度で、小学1年生の登録率は50パーセントを超えると予想していましたが、そうはなりませんでした。しかし、令和5年度と比べてすべての学年で、登録率が上昇しています。小学1年生は約3ポイントの上昇です。比較的、児童クラブの利用から離れる小学5年生でも1ポイント以上の上昇ですから、学年が上でも児童クラブ利用のニーズは高まっていることが明確に分かりますね。
 当然、全体の合計でも増えています。令和6年度は26.08%で前年より1.67%増えました。たかだか1.67%じゃないか、と思わないでください。全体の公立小学校児童数を580万人とすると、その1.67%は96,860人となります。約10万人、児童クラブの登録児童数、つまり利用する児童数が増えるのです。9万6000人を、適切な児童数40人で割ると、2,400になります。2,400クラブを毎年、全国で増やさねばならないのですよ。

 登録率が小学3年生と4年生の間で大幅に変化していることに留意してください。私はこれを、「小4の崖」と呼びます。壁ではなくて崖とします。利用したくても利用できず、やむなく児童クラブから外の世界に飛び降りねばならないのです。崖ではなくて一体何でしょう。
 ちなみに登録状況で公表された待機児童数、これはまた次回以降で取り上げますが、小学4年生の待機児童数は5,707人で全体の32.3%で最も多いのです。小学1年生の待機児童数は2,209 人で全体の12.5%ですから、児童クラブで小学4年生を迎えるのは困難です。これはいけません。

 児童クラブの待機児童解消は、新1年生を優先して行うと放課後児童対策パッケージ2025でうたわれていますが、小学4年生の「小4の崖」を至急、解消する施策が必要です。入所の学年を事実上制限している自治体には補助金を削減するなどの施策も取り入れるべきでしょう。

実施状況について次回以降も続けます。

<おわりに:PR>
 弊会は、次の点を大事に日々の活動に取り組んでいます。
(1)放課後児童クラブで働く職員、従事者の雇用労働条件の改善。「学童で働いた、安心して家庭をもうけて子どもも育てられる」を実現することです。
(2)子どもが児童クラブでその最善の利益を保障されて過ごすこと。そのためにこそ、質の高い人材が児童クラブで働くことが必要で、それには雇用労働条件が改善されることが不可欠です。
(3)保護者が安心して子育てと仕事や介護、育児、看護などができるために便利な放課後児童クラブを増やすこと。保護者が時々、リラックスして休息するために子どもを児童クラブに行かせてもいいのです。保護者の健康で安定した生活を支える児童クラブが増えてほしいと願います。
(4)地域社会の発展に尽くす放課後児童クラブを実現すること。市区町村にとって、人口の安定や地域社会の維持のために必要な子育て支援。その中核的な存在として児童クラブを活用することを提言しています。
(5)豊かな社会、国力の安定のために必要な児童クラブが増えることを目指します。人々が安心して過ごせる社会インフラとしての放課後児童クラブが充実すれば、社会が安定します。経済や文化的な活動も安心して子育て世帯が取り組めます。それは社会の安定となり、ひいては国家の安定、国力の増進にもつながるでしょう。
 放課後児童クラブ(学童保育所)の運営支援は、こどもまんなか社会に欠かせない児童クラブを応援しています。

 弊会代表萩原ですが、2024年に行われた第56回社会保険労務士試験に合格しました。これから所定の研修を経て2025年秋に社会保険労務士として登録を目指します。登録の暁には、「日本で最も放課後児童クラブに詳しい社会保険労務士」として活動できるよう精進して参ります。皆様にはぜひお気軽にご依頼、ご用命ください。また、今時点でも、児童クラブにおける制度の説明や児童クラブにおける労務管理についての講演、セミナー、アドバイスが可能です。ぜひご検討ください。

 放課後児童クラブについて、萩原なりの意見をまとめた本が、2024年7月20日に寿郎社(札幌市)さんから出版されました。本のタイトルは、「知られざる〈学童保育〉の世界 問題だらけの社会インフラ」です。(わたしの目を通してみてきた)児童クラブの現実をありのままに伝え、苦労する職員、保護者、そして子どものことを伝えたく、私は本を書きました。学童に入って困らないためにどうすればいい? 小1の壁を回避する方法は?どうしたら低賃金から抜け出せる?難しい問題に私なりに答えを示している本です。それも、児童クラブがもっともっとよりよくなるために活動する「運営支援」の一つの手段です。どうかぜひ、1人でも多くの人に、本を手に取っていただきたいと願っております。注文はぜひ、萩原まで直接お寄せください。書店購入より1冊100円、お得に購入できます!大口注文、大歓迎です。どうかご検討ください。

 放課後児童クラブを舞台にした小説を完成させました。いまのところ、「おとなの、がくどうものがたり。序」と仮のタイトルを付けています。これは、埼玉県内の、とある町の学童保育所に就職した新人支援員が次々に出会う出来事、難問と、児童クラブに関わる人たちの人間模様を、なかなか世間に知られていない放課後児童クラブの運営の実態や制度を背景に描く小説です。新人職員の成長ストーリーであり、人間ドラマであり、児童クラブの制度の問題点を訴える社会性も備えた、ボリュームたっぷりの小説です。残念ながら、子ども達の生き生きと遊ぶ姿や様子を丹念に描いた作品ではありません。大人も放課後児童クラブで育っていくことをテーマにしていて、さらに児童クラブの運営の実態を描くテーマでの小説は、なかなかないのではないのでしょうか。児童クラブの運営に密接にかかわった筆者だからこそ描ける「学童小説」です。出版にご興味、ご関心ある方はぜひ弊会までご連絡ください。ドラマや映画、漫画の原作にも十分たえられる素材だと確信しています。ぜひご連絡、お待ちしております。

 「あい和学童クラブ運営法人」は、学童保育の事業運営をサポートします。リスクマネジメント、クライシスコントロールの重要性をお伝え出来ます。子育て支援と学童保育の運営者の方、そして行政の子育て支援と学童保育担当者の方、議員の方々、ぜひとも子どもたちの安全と安心を守る場所づくりのために、一緒に考えていきましょう。セミナー、勉強会の講師にぜひお声がけください。個別の事業者運営の支援、フォローも可能です、ぜひご相談ください。

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